当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!
↑ゲーム考察チャンネルを始めました。記事をもとにエルデンリングの考察をやっています。
オデ、イエティ! 今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます!
お題は『角人・角人の戦士』について!
角人とは
角人はDLCの舞台となる影の地の先住民族であり、黄金樹に属さない勢力である。角人にはその名の通り、何本もの角が生えている場合が多い。
各地にはその文化が残っているためかつては広い区域で生活を営んでいたようだ。やがて黄金樹勢力であるメスメル軍が侵略を開始し、「メスメルの火」と呼ばれる虐殺によって多くの命が奪われたことで実質的にその地はメスメルの支配下となった。そして女神マリカによって狭間の地から隔離され、影の地と呼ばれるようになった。
「メスメルの火」が起こった理由についてはこちらの記事で考察しているのでぜひ↑
我らの地に火をかけ、塔を影に隠し
全てを奪い、壊してなお、醜悪を誇り足りぬか
我らを裏切り、火をかけた、マリカの子らめに
メスメルに、その手先どもに
どうか、報いを与えてくだされ
角人の老婆の台詞より
角人側の視点から見るとマリカが率いる黄金樹勢力はいきなり攻撃してきたことになる。生き残った角人たちはこの理不尽を呪っており、黄金樹勢力への憎悪を募らせている。NPCとして登場する角人は「角人」「角人の老婆」の二人だがどちらも黄金樹勢力への復讐心に燃えている。
角人にとって最も重要な地が「螺旋塔エニル・イリム」であり、メスメルの火の際に黄金樹勢力(おそらくマリカ)によって影の中へ隠されて封印されている。塔の街ベルラートとエニル・イリムは繋がっているが、影による封印で行き来が不可能となっていた。
角人の信仰
角人は「角」を神聖視している。角は坩堝の諸相を由来とする徴であり、新たな芽生えを繰り返すことで「混じり角」になる。混じり角は特に霊長を示す徴とされ、角人の装具には混じり角の意匠が多い。
角人は角を信仰しているが角人の中にはミドラーのように角の生えていない角人も存在する。しかしミドラーの地位は高く、角の有無で差別されているという描写は見受けられない。
角や芽生えと言えば祖霊の民の装身具のことも想起させる。長く生きた獣は角に新たな芽生えを迎える。これは混じり角を指している。つまり角人と祖霊の信仰はほぼ同一のものであり、二つの種族の起源は似たところにある可能性が高い。
しかし祖霊の民と角人には明確な差異が存在する。祖霊の民は文明と金属を否定するが、角人には明確に文明があり金属も使用している。
考古学者の製法書によるとラウフの古遺跡は角人の文化よりもさらに旧い時代のものである。その時代に祖霊の民の先祖と角人の先祖は分かたれたのかもしれない。本編の狭間の地リエーニエにはウルドの王朝遺跡というエリアがあり、祖霊はそこに生息している。
話を角人に戻すが角人の信仰の中心は「螺旋塔エニル・イリム」にある。螺旋樹の聖印によると白き塔は「神に届かんとする」場所であり、その頂点にはマリカとミケラが神となった「神の門」が存在する。この事から角人は何らかの方法で神を生み出すことを目指していたものと思われる。螺旋塔=螺旋樹。塔のモチーフはやはりバベルの塔だろうか。
角人の信仰が「螺旋」という形を取っているのは螺旋が坩堝の整流とされているからだ。整流には二つの意味があるがこの場合では「交流を直流に変換すること」の意味で使われているように思う。つまり坩堝という様々なものが入り混じっているところから螺旋という柱の形へと整える。そしてその柱はいつか神へと至る柱だと信じられている。
角人の信仰には明確な「神」は存在しない。神獣もあくまで天の使いではなく神ではない。生命の根源である坩堝を突き詰め、やがては神を迎えることを目指す宗教が根ざしていたのではないだろうか。その辺りの詳しい考察はまた別の記事で行いたい。
ここからは角の戦士たちについてまとめていく。
角人の戦士図鑑
角の戦士
角の戦士は塔の守護者とされる。ゲームにおいてはかなりの強敵であり強靭な肉体を持っている。ベルラートには武装した影人(角人)が存在するが、全く比較にならないくらいタフである。遺灰には重装の戦士とされるため、守護者として堅さを追求した戦士なのだろうか。
角の戦士たちは「神降ろし」という技術を持っている。これによって自らの肉体に人ならぬ膂力を得て、巨大な剣を振るう。そして神降ろしを行うことで角を降ろすことができる。こうした「角降ろし」の戦技のエフェクトは坩堝の諸相に似ており同じ生命の力を由来としているのがわかる。
塔では戦士も、その武器も、依り代なのだというテキストから分かることとして角人の戦士たちは「神降ろし」や「角降ろし」を戦闘の技術として用いている。
まず「混じり角」がこれでもかというくらい派手に主張しているのは混じり角が霊長の徴、優れたる証だからだ。これを被る角人はおそらくここまでの角はない(というか中の人の角がデカすぎたら兜が被れない)しかし塔を守護する戦士として巨大な混じり角を誇る兜を被ることで守護者であるという自覚を増させ、神降ろしに入りやすくしている。
また武器の刀身に象られた混じり角は角降ろしの触媒となるという。こうした「形」から入ることにより角人の戦士たちは最大限の力を発揮するのだろう。
また角の戦士の武器(曲剣、大曲剣)は七支刀に似ている。七支刀は豊穣を願い神を降ろすための祭具とされており、コンセプトがかなり近いところにある。七支刀は稲の芽生えを分かられた剣先に宿すのではないかという説もあり、これは角の芽生えに通じるものがある。
ちなみに角の戦士の銅鎧のデザイン、黄土色のストールは古英雄の裸体を象ったものであるという。これは後述する角の戦士の始祖である神鳥の戦士のことでもないため、ラウフの古遺跡のような旧文明の時代の英雄のことを指していると思われるが詳細は不明。
神鳥の戦士
神鳥の戦士は角の戦士の始祖である。後頭部には混じり角が施されている。またテキストにはないが黄土色の金属で作られており、角の戦士の銅鎧と同様に古英雄の裸体を象った意匠となっている。
金色の神鳥は冷酷で人に馴染まぬとされ、それを降ろす者はごく少なかったという。このテキストから察するに戦士たちがその身に降ろす「神」にはそれぞれ性質があり、角の戦士側も扱いにくい神は選ばなかったことが伺える。神降ろしは言わばシャーマンの憑霊のような技だったのだろう。そして想像に過ぎないがどの神を降ろすか降ろさないかというのは戦士に決定権があり、その結果神鳥の戦士はあくまで「始祖」となり数を減らしていったものと思われる。
金色の鳥というモチーフはグリフォンを彷彿とさせる。グリフォンは鷲(あるいは鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物。そして自らの守る黄金を奪おうとする敵を引き裂くとされている。
紋章学によれば鳥の王(鷲や鷹)と獣の王(獅子)の紋章を合わせることで「王家」を示す紋章になるという。角人に伝わる「神鳥」と「獅子」の組み合わせはそうした意味も込められているのかもしれない。
神鳥の戦士オルニスの遺灰によるとオルニスは神鳥を意のままに飼いならしていたという。神鳥の神降ろしでは翼と羽を得て飛行さえしており、かなり人を離れた技であることがわかる。
しかし「地に落ちて神殿街の守り神になったという」というテキストを見ると、オルニスは墜落死したようである。神鳥を飼いならした戦士にも失敗はあったのか、あるいは神鳥が牙を剥いたのか。真相は定かではない。もちろん物理的に地に落ちたという意味ではなく寿命などで死亡した可能性もなくはないが、そんな詩的な表現をするものだろうか。
神獣戦士
神獣戦士は選ばれた角の戦士たる証である。獅子の面と毛皮を纏っており、その中でもさらに神降ろしに優れた者だけが勇人(はやと)として神獣獅子舞の名誉を得たという。
神獣である獅子は天の使いとされ、角人の文化圏には様々な獅子の彫像などが残っている。神鳥を象ったものはほとんどなくあくまで神鳥の戦士が角の戦士の「始祖」であることから、信仰の対象が神鳥から獅子へ置き換わっていった可能性もあるかもしれない。神鳥は冷酷で人に馴染まなかったとされ、そうした降ろす「神」としての性質的に獅子の方が望ましかったのだろう。
呪剣士
多くの褪せ人が墓地平原で最初に出会う通称・第一村人こと角人の呪剣士。しかし呪剣士という生業ではなく、あくまで塔の修験者である。土地神になるために修験を重ね、霊性を高めている最中であり恐らくは断食を行っているためガリガリに細い。
呪剣士が目指している土地神は角人の乾いた遺体。つまり即身仏である。人の身でありながら強い霊性を持つに至っており、街や村で祀られている。角を見るにかなり立派な混じり角が生えており、優れた角人の証となっている。その掌には霊灰がそっと生じるという。
この土地神の混じり角の形と呪剣士の仮面に象られた混じり角は似ており、修験者たちが明確に土地神のイメージを目指すための意匠だと考えられる。
なぜ「呪剣士」と呼ばれるかというと彼らが土地神になれなかった修験者だからだ。かつて侵略の影がなかった時代は土地神になれない修験者たちは「災い」とされ牢獄へと幽閉されていた。やがて角人の土地に対する侵略者であるメスメル軍が現れたことで呪剣士たちは野に放たれ、今に至る。
呪剣士の得物である円刃はかつて祭具であり、修験者が克己するための舞踊に用いられていたという。神事が軍事になるのは神獣獅子舞と似た流れである。
しかしミラの遺灰を見る限りでは土地神になれなかった修験者たちにも心があり、ラビリスは自らと交流したミラの死によって闇を宿したという。英語版Wikiによるとミラは「彼女」とされており、女性だったようである。ラビリスの性別はわからないがどちらにせよ両者が恋人関係にあった可能性はある。
修験者は織り込み済みだったのかもしれないが土地神になれなければ幽閉という定めであり、角人の過酷な文化の程が伺える。
余談だがこの呪剣士の円刃という武器は呪剣士から確率でドロップする。両手に装備できるのでつけてみるのだが……。
なんと外側の刃がプレイヤーの手首を貫通しているのである。最初装備した際は修験者だからストイックに祭具を体に埋め込んでいるのかと思ったが……。
ちゃんと手首を貫通しないように持っていた。そりゃそうである。
というわけで今回はここまで。角人については今後も色々なトピックに分けて考察したいですね。ではおつかれさまでした。