【エルデンリングDLC】狂い火の王ミドラーについて【考察】

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当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!

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↑動画版です。

オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。

お題は『狂い火の王ミドラー』について。

目次

ミドラーとは

闇照らしの地下墓を抜け責問官のイオリを下すと、そこには霊馬トレントさえも怯える奈落の森が広がっている。
この地はかつての賢者ミドラーの隠遁の地だという。

陰鬱な森の奥にはミドラーの館が建っているが、その様子は尋常ではない。館の前には首を落とされ、非業の死を遂げたミドラーの従者たちが並べられている。

館に足を踏み入れた褪せ人に、館の主ミドラーは警告する。
狂気に近づくな、と。」一体、この館で過去に何が起こったのか。今回は謎多きボス・狂い火の王ミドラーと、
その周辺について徹底的に考察していく。

まずミドラーというのはミドラーの館の最奥で出会うことになるボスだ。館に入ると館の主であるミドラーから警告を受ける。ミドラーとその配下の霊体は褪せ人が館に入ることを拒んでいる。警告を無視して進んでいくとミドラーの悲鳴が聞こえてくる。

館には角人の責問官たちが構えており、館の主であるミドラーを監視するような配置となっている。それらの責問官を下しながら進むとついに館の最奥、ミドラーが居る「対話室」に辿り着く。警告を無視して館の最奥まで歩みを進めた褪せ人へ、ミドラーは激昂し掴みかかってくる。ここからミドラー戦が始まる。

ミドラーは頭から劫罰の大剣を突き刺された、小さな老人の姿をしている。第一形態は戦闘能力の薄いこの状態のミドラーと戦闘するが、撃破することでムービーを挟み、第二形態へと移行する。

ミドラーが頭から劫罰の大剣を引き抜くと、千切れた頭部の代わりとなるように狂い火の王の頭部が浮かび上がる。そして「狂い火の王ミドラー」となって第二形態戦が始まる。撃破すると追憶が入手できるが、それ以降で特にミドラーの館でイベントなどが発生することはない。ミドラーが何者なのかという考察は、褪せ人の手に委ねられている。


ここからは一つ一つのテキストを見てミドラーについて掘り下げていく。賢者ミドラーは隠遁の地として奈落の森を選んだ。奈落の森は賢者ミドラーの隠遁の地として知られていたが、角人たちはこの場所を禁忌とした。
禁忌の理由は蔓延する狂い火にある。奈落の森は狂い火の病に感染している。あちこちの野生動物の瞳に狂い火の光が宿っていることからそれは明らかだ。

そして角人は狂い火を忌避している。その理由は狂い火が永遠とされる霊すらも焼きとかしてしまうからだ。奈落の森へ足を踏み入れると我らが相棒、霊馬トレントが怯えて姿を見せなくなる。

トレントは霊である自らを溶かしてしまう狂い火に怯えている。だから出て来れない。実際に狂い火エンドにおいてはトレントの指輪が狂い火で溶け、消えてしまう。

影の地の各地には霊体の墓石が立っているが、奈落の森には存在しない。これは狂い火に焼き溶かされたからなのだろう。

では、この地が狂い火の病に侵されたのは何故か。その要因と思わしき存在がミドラー夫妻だ。奈落の森は賢者ミドラーの隠遁の地として知られていた。逆に言えばミドラーの隠遁の地でしかなかったということだ。しかし後に奈落の森は禁忌の地とされるに至った。つまりミドラーが隠遁したことと、狂い火の蔓延には因果関係がある。


それを裏付ける状況が奈落の森の中に建つミドラーの館で見られる。ミドラーとその配下は、角人の責問官によって劫罰を受けている。そしてミドラーの館の前には首を落とされたミドラーの配下の死体が並んでいる。


また、館の中の霊体はこう言っている。

……
…やめてくれ。もう、たくさんだ
俺たちは、同胞だろう…
だのに、何故、こんな酷い仕打ちを…
ミドラー様が、何をしたって言うんだ

この霊体の台詞から察するにミドラーと角人の責問官は「同胞」の間柄である。ミドラーはかつて角人の同胞であり、賢者と呼ばれた偉人だった。しかし今は劫罰として頭に大剣を突き刺され、館は責問官によって支配されている。つまりミドラーは狂い火を広めたという罪で拷問を受けているということだ。

三つの勢力

さて、ミドラーについてさらに掘り下げる前にそれぞれの勢力についてざっくりとまとめておく。ミドラーについて考察していくにあたりややこしいのが、様々な勢力がいることだ。それぞれに思惑があり複雑な状況にある。これらを三つの勢力に分けて紹介していく。

勢力① ミドラーとその妻ナナヤ


まず①となるのが館の主であるミドラーとその妻ナナヤだ。ミドラーは現在進行形で劫罰を耐えており
、その妻のナナヤは比較的綺麗な姿で死亡している。重要なのはミドラーに劫罰を受けさせている責問官に対し、
ミドラーは報復する意思を持っていない、という事実だ。

ミドラーは褪せ人との戦いで劫罰の大剣を引き抜き、狂い火の王となる。しかし逆に言えば、褪せ人と戦わない限りは、ずっと対話室で劫罰の痛みを耐えていることになる。館に足を踏み入れた褪せ人に対して警告で済ませていることからも、ミドラーは正気を失った狂い火の罹患者ではない。

勢力② 角人の責問官

②が角人の責問官だ。「責問」というのは厳しく問いただして白状させること、そして拷問の意味がある。前述したとおり、奈落とミドラーの館に蔓延している狂い火は霊を焼き尽くす、角人にとって忌避する病である。これを制圧することを目的として責問官は派遣されている。


奈落の森に繋がる道は責問官の古老イオリが封鎖し、ミドラーの館において一番多いエネミーは責問官。ミドラーの館を責問官が実質的に支配しているということは数で分かる。

そしてイオリを見ればわかるが、責問官は霊を呼び出す力を持つ。奈落の森には監視用の鳥の霊体がいる他、褪せ人が探索していると館内に角の戦士の霊体が現れ、襲ってくる。これらは全て査問官の差し金だ。

狂い火が霊を焼き溶かすのは事実のため、責問自体の正当性は認められる。しかしその異端狩りが過剰であるという描写も散見される。アイテム「黄金の角貨」などを見る限り、責問には得が付いて回る。角人の文化では異端などを詰問し、拷問に掛ける職が名誉を得ているということだ。


責問で異端狩りを行うことに大きな得が生じるため、そこに正義があるのかについては疑問が残る。前述したとおりミドラーには抵抗の意思がないため、ミドラーの館は実質的には責問官たちが支配している。

勢力③ 狂い火の信奉者たち

最後の③は狂い火の病に罹った者たちだ。これには奈落の森、ミドラーの館にいる全ての狂い火の信徒が含まれる。敵対NPCの狂える手、狂い火を使う責問官はミドラーの配下。触れ得ざる翁は狂い火によって発生したであろう謎の存在だ。

まず狂える手は墓守鳥の防具に身を包んでいることから、元は角人の勢力であると考えられる。狂える手の武器、「狂手」には、「過酷な異端狩りを行った同胞たちへの執拗な、暗い復讐心」とある。


これは館の霊体の言葉と合わせて、ミドラーとその配下へ行われた角人の責問官の異端狩りのことを指しているのだろう。

次に非常に紛らわしい存在である、狂い火の責問官について。奈落の森にいる責問官は狂い火の祈祷を用いてくる。
この事から彼女たちは角人の責問官でありながら、狂い火の信徒になった存在であると考えられる。ミドラーの館内には狂い火を使う責問官はいないため、奈落の森の責問官とミドラーの館の責問官は別の勢力と考えられる。狂手のテキストにある、狩られた異端側に属している責問官なのだろう。


ミドラーは元々角人の同胞なので、ミドラーの配下に責問官がいることはおかしくない。または狂い火を消すため派遣されたが、逆に狂い火に感染してしまった責問官とも考えられる。

最後に触れ得ざる翁だが、彼らは別にミドラーの配下であるという描写はない。元が人間なのかも怪しいので、狂い火が蔓延したことで出現した超自然的な存在だと仮定する。

これらの狂い火の感染者はそれぞれ別の思惑を持っているが、その中でもミドラーの配下は過酷な異端狩りを行った同胞、つまり角人の責問官たちに対して復讐心を燃やしている。

というわけで三つの勢力について紹介した。現状をややこしくしているのがミドラーとその配下の、スタンスの違いだ。ミドラーは責問官の劫罰に大人しく耐えているが、ミドラーの配下は復讐心に燃えている。そしてミドラーの配下はほとんど館の中からは締め出されており、館を支配しているのは角人の責問官である。

これら勢力の違いを理解しないと、考察するのが非常にややこしいのでまず先に紹介させてもらった。では次に、どういう経緯で狂い火が広まったのかを考える。

狂い火の発端

奈落の森は当初、ただのミドラーの隠遁の地でしかなかった。そこに狂い火が持ち込まれ今の形になった。では一体、何が狂い火の発端なのか。時系列的に古く、そして明確に狂い火に接している描写が「ナナヤの灯」に見られる。


古い時代、遠い場所で生まれた狂い火の王のなりそこない、そのなれの果てはナナヤにそっと抱かれていた。


古い時代、遠い場所。つまりミドラーの館ではない、もっと遠い場所で生まれた狂い火の王のなりそこない。それをナナヤはそっと抱いている。このナナヤの灯は、ミドラーとナナヤの子どもだろう。

まずローディング画面でも出てくるミドラーとナナヤの肖像画では、ナナヤは腹部をおさえている。つまり妊娠している。しかしミドラーの館にはミドラーとナナヤの子どもは影も形もない。子どもと家族三人で描かれた絵画もない。彼らの子供は五体満足の姿で生まれては来なかったのだろう。

ナナヤの灯は「卑小な背骨の先に消えかけの狂い火」が宿っている。つまりこれは赤子の骨のなれの果てなのだろう。
ミドラーとナナヤの子は、産まれてきた時点で狂い火の王の器だった。しかし赤子だったからか、または全く別の理由で狂い火の王となることなく歪な骸の松明になってしまった。

ナナヤの死体は大事にこれを持っているため、ナナヤはこの灯を自分の子どもと認め、大事に抱いていたのだろう。
この赤子を感染源とすると話が一気に繋がってくる。

ミドラーは狂い火を抑え込もうとしているが、狂い火を隠そうとしていたようでもある。狂い火への感染を避けようもなかったのはミドラーとナナヤの子供こそが感染源で、ナナヤが子供から離れようとしなかったからではないだろうか。

ミドラーとナナヤは我が子を隠すために奈落の森を隠遁の地として選んだ。その後ミドラー、ナナヤ、そしてその配下が狂い火の感染者となった。奈落の森には廃教会が存在するため、狂い火の教会を作った形跡がある。これはミドラーの配下が行ったことだろう。


しかし後に角人の責問官たちが異端狩りとして奈落の森へ押し寄せ、ミドラーとその配下に劫罰を与えた。ミドラーの館から配下は締め出され、館は責問官に支配された。全て筋は通る。

またミドラーが狂い火を、何かしらの目的で活用しようとした可能性も考えられるが、ミドラーは責問を受け入れ、狂い火を鎮めようとしているためこれにはやや矛盾が生じる。

狂い火は苦痛、絶望、呪いといった負の要素を焼き溶かす力を持つ。かつてミドラーが教会を建て狂い火の信仰を広め、この力で何らかの呪いなどに対処しようとした可能性はあるが、具体的にこれだという描写はないため、ミドラーが積極的に狂い火を広めたという線は薄いと考えている。

次に狂い火の信仰を伝える三本指について触れておく。奈落の森には三本指に直接握られた信徒のブドウがあるため
三本指がいた可能性もあるのだが、森にも館にもいまいちその痕跡は見られず、ミドラーの体には指痕もない。

ミドラーがいる対話室に三本指がいた……などの考察も出来なくはないが、想像の域を出ない。これらの事から当動画では、三本指の直接的な関与については考察に含めないものとする。

ミドラー夫妻の謎


では次にミドラーとナナヤの不可解な点について掘り下げていく。ミドラーは頭から劫罰の大剣を突き刺され、長く続く地獄の苦しみに耐えていた。これは何故だろう。

まず改めて思い返してほしいことだが、ミドラーは褪せ人との戦いにおいて自らの手で劫罰の大剣を引き抜いている。
つまり劫罰を受け続けているのはミドラー本人の意思によるものだ。褪せ人との戦いでミドラーは「痴れ者どもが!」と罵っている。

この言葉からは褪せ人・責問官のように狂気に近づく者たちへの、激しい怒りを感じる。ミドラーは狂い火を広めた罰として劫罰を受けているものの、同時に自罰的な思いだけで劫罰を受け入れているわけではないことがわかる。

ミドラーが劫罰を受けている理由はやはり、そのムービーで許しを請うているナナヤの存在が大きいのだろう。ミドラーはムービー中に、「もう…もう、いいだろう……許しておくれ、ナナヤ…」と呟いている。そして劫罰の大剣を引き抜く。


この謝罪の相手はナナヤであり、謝罪の理由は劫罰を受け続けることを諦めることにある。重要になってくるのは狂い火の王の追憶だ。

黄金の逆棘のもたらす、永遠の苦痛の中で
ミドラーは、ナナヤの言葉に縋っていた。
耐えてください
それは、呪いの言葉であった。

長くはないが、短い中で様々な謎を含んだテキストだ。このテキストを元に整理してみよう。ミドラーは劫罰を受ける前にナナヤから「耐えてください」と言われていた。そして永遠に続く劫罰の苦痛の中で、その言葉を頼りに耐え続けていた。しかし褪せ人によってブン殴られ、ついにミドラーに限界が訪れた。自らの手で劫罰の大剣を引き抜き、耐えるのをやめる事に決める。

ナナヤの頼みに応えられないことに対して、ミドラーは許しを請うた。そして大剣を引き抜いた。大剣を引き抜いた結果、ミドラーの首は千切れ。狂い火の王が顕現する。つまりミドラーが忌避し続けていたのは、狂い火の王が降臨することだ。


狂い火の王は全てを焼き尽くす存在である。ミドラーは狂い火を広めてしまったが、何もそうしたくて広めたわけではない。館に入る者へ警告することからも、ミドラーは良識の残っている存在である。ミドラーは狂い火の王になりたくなかったので、劫罰に耐え続けていた。だが果たしてそれだけだろうか?

追憶のテキストにはある種、矛盾したテキストがある。
ミドラーは、ナナヤの言葉に縋っていた。
耐えてください。それは、呪いの言葉であった。

ナナヤの「耐えてください」という言葉は、ミドラーにとって縋るべき言葉であり、同時に呪いの言葉だった。この矛盾について考えてみよう。まず「縋っていた」という点から、ミドラーはナナヤのこの言葉に救いを見出していたことがわかる。耐え続けることにより、劫罰を受けなくて済むようになる希望を見出していたのではないだろうか。


まず、ミドラーは狂い火の王になることを忌避していた。そして劫罰の大剣が突き刺されている間、ミドラーは狂い火の王にはなっていない。つまり劫罰の大剣には特殊な力があるのか、刺さっている間はミドラーは死亡しないし王にもならない。ミドラーは劫罰を受けながら、狂い火の王にならずに狂い火を克服できる可能性に賭けていたものと思われる。

狂い火を鎮める方法はあると言えば、ある。本編において三本指により狂い火を受領した褪せ人は、「ミケラの針」を時の中心で使うことで狂い火の王となるその運命を回避できる。だが、神の知恵を持つミケラを以てしてミケラの針は未完成。時の中心で使用する、というワザップの裏技みたいな方法でしか効果を発揮しない。


ミドラーはこうした狂い火の受領を回避・無効化する方法を研究したが見つけられなかったのだろう。
ミドラーの館には書庫があり、隠遁してからも何らかの研究をしていた可能性は高い。ミドラーは狂い火を広めたくて広めたわけではないため、狂い火を抑える研究もしていたと考えられる。しかし最終的には方法を見つけられず、劫罰を受けるに至った。

ミドラーが劫罰を頭から受けている姿は、針で留められているようにも見える。劫罰を受けている間は狂い火の王にはならないことからも、この劫罰の大剣には地獄の苦痛と共に、何らかの希望が与えていたんじゃないだろうか。

しかし、劫罰を耐え続けるというのは永遠の責め苦を受け続けるということ。ナナヤの「耐えてください」という言葉は、劫罰を受けながら狂い火の王を克服するという縋るべき希望であり、同時に克服できなければ地獄の苦痛を受け続けるという、呪いでもあった。


そう考えると縋るべき言葉であり、同時に呪いの言葉であるという矛盾に得心がいく。

ナナヤは何者だったのか? ミドラーの妻だという以外に特殊な背景はあるのか? この事についてはほとんど情報がないため、答えを出すのは非常に難しい。ナナヤはミドラーの妻であり、その子は狂い火の王のなりそこないだった。ナナヤはミドラーのいる部屋の近く、書庫の身動きの取れない場所で死亡している。そして特に外傷は見られない。

館の主であるミドラーは拷問を受けた痕があるが、ナナヤは傷のない骸だ。この事からミドラーはナナヤに手出しをしないよう、責問官へ懇願したのではないだろうか。また、それにはナナヤ自身が無力な存在である必要もある。もしかしたら責問官がミドラーへと劫罰を与える前に、ナナヤはすでに死亡していたのかもしれない。

ナナヤが狂い火の導き手のシャブリリではないか? という説もある。これについても考えてみる。

シャブリリはかつて狂い火の起源とされた男だ。その肉体は滅びたが、精神だけの存在となって歴史の影で暗躍し続けている。シャブリリは「混沌の王」を誕生させ、それにより世界を焼き溶かすことを行動原理としている。

本編においてシャブリリはNPCユラの肉体を乗っ取って登場し、褪せ人を混沌の王への道に誘う。つまりこの場合は死体に精神だけで乗り移れるシャブリリが、ナナヤを乗っ取っていたのではないか? という説だ。

しかし個人的にはナナヤ=シャブリリはしっくりきていない。ミドラーがその妻の変化に気づかないか? という事がまず一つ。シャブリリは口がうまいが、相手になりきるつもりはない。そもそも乗り移った死体を選んでいるようでもない。非常に胡散臭い存在である。賢者とされるミドラーが縋りつく相手には思えない。

そしてナナヤはミドラーに狂い火の王にならないように劫罰を耐えて、と言っているのでそもそもシャブリリの行動原理にはそぐわない。ナナヤとシャブリリは無関係と考える。

狂い火の王とは

次にそもそも「狂い火の王」とは何なのか、について考えてみよう。ナナヤの灯は狂い火の王のなりそこないだ。そしてミドラーの第二形態は狂い火の王。また、プレイヤーである褪せ人もエンディングによっては狂い火の王となる。


つまり狂い火の王というのは、特定の個人を指しているわけではなくある種の称号のようなものなのだろう。しかし重要な点として、狂い火の王には元の肉体の自我が見受けられない。


褪せ人は狂い火エンドにおいて、狂い火の王となった後は世界を焼き尽くすという。一応、狂い火の王になった理由としてはメリナを救いたいという思いがあったはずだが、狂い火の王となった後は世界を焼き尽くそうとする。また、ミドラーも狂い火の王となった後は一言も発さず(そもそも口がないが)、第一形態とはうって変わって悠々とした佇まいで戦闘を行う。

これらの共通点から見て、狂い火の王というのは「頭部」のみを表しているのではないかと推測できる。

祈祷「ミドラーの狂い火」によると、この祈祷では王の頭の似姿を召喚するとある。つまり、狂い火の王の本体は
狂い火の巨大な火の玉であり、頭部から下はあくまで依り代。狂い火の王が顕現した時点で、元の人格は消失してしまうのではないだろうか。


またリエーニエには狂い火の灯台があり、多くの信徒の祈祷によって火の玉が生じている。これも狂い火の王の似姿の一つと言えるだろう。

狂い火の王となる条件は本編においては不明だったが、情報が増えた今ならある程度は考察できる。かつて最もエルデの王に近い存在と謳われた竜槍のヴァイクは、しかし狂い火の王とはなれなかった。

一方でナナヤの灯によると、赤子の骸のなれの果てでも狂い火の王の素質を持っていることがわかる。つまり狂い火の王となれるのは素質がある者、もしくは特殊な条件を満たしている者のみ。本編内での描写から、この条件の一つとして三本指によって握られることが必須と思っていたが、ナナヤの灯やミドラーには指痕が見られない。


つまり狂い火の王となるために必要な条件は、特に見当たらない。確実性の高い情報はほぼないというのが結論だ。確定しているのは狂い火の王と呼ばれる存在は巨大な狂い火の玉を頭部に宿した状態を指しているということのみ。

また、触れ得ざる翁を撃破することで入手できる「翁の歓喜」のタリスマン。このテキストで語られている「」というのは、狂い火の王のことだろう。ミドラーの名前が語られていないため、あくまで触れ得ざる翁たちは狂い火の王に惹かれる存在だ。

我らが王に、発狂を捧げよ。とあるので、触れ得ざる翁たちは狂い火を広めることで王に尽くしている。触れ得ざる翁たちは、狂い火のブドウの集合体のようなデザインとなっている。頭部には狂い火の爛れた目玉が詰まっているのが分かる。謎の多い存在だが、目玉が多い理由は本編のNPC、ハイータの台詞から考察できる。

彼方の灯は、とても遠く、また微かなものです。
一人の瞳には、到底映ることのないほどに。
…しかし、皆の瞳を集めれば、それを感じることができる。


ハイータがブドウを食べ続けていた理由は、三本指の巫女となるため。たくさんの目を集めることで灯を強く、大きなものにするというのは狂い火を持つ者の共通認識なのだろう。

混沌の王とは

次に本編中で狂い火関連のNPCが語る、「混沌の王」という存在について。狂い火の王と混沌の王には何の違いがあるのか。シャブリリとハイータは全てを焼き溶かす混沌の王となることを褪せ人に願う。これはどういう意味なのか。

三本指の巫女となったハイータによれば、苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみは
大いなる意志の過ちから生じたものであるという。その過ちを正すために混沌の黄色い火(狂い火)で
全てを焼き溶かし、一つにしなければならない。全ての罪と苦しみを焼き溶かす存在、それが混沌の王である。

つまり混沌の王というのは全てを焼き尽くす、狂い火の王の到達点のことだろう。ここで改めて「ミドラーの狂い火」を見ると、ハイータの語っていた苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ、という文が記されていることがわかる。

ミドラーは狂い火の王としては弱すぎた。これは文字通りのミドラーの頑強さや戦闘能力の話ではなく、王としての在り方について語っているように思える。ミドラーは狂い火の王でありながら、劫罰によってその火を抑えつけ、耐え続けた。つまり全てを焼き溶かす混沌の王になるにはその心が弱すぎた、という意味だろう。

劫罰に耐え続けた精神力の強さ、ナナヤへの思いは紛れもないミドラーの力である。しかしそれは狂い火の王としては欠点でしかなく、ミドラーが最初から諦めていれば、狂い火の王としては比類なき強さを誇ったのかもしれない。

さて、長くなったからまとめようと思う。

かつて賢者ミドラーは妻ナナヤとの間に子を生した。しかしその子が狂い火を宿していたため、
奈落の森へと隠れ住んだ。やがて角人の責問官に見つかり、過酷な異端狩りの憂き目に遭った。

ミドラーは責問を受け入れ劫罰を受けたが、妻ナナヤの「耐えてください」という言葉に縋り、劫罰の痛みを受け続けた。やがて狂い火を克服する希望を見ていたが、終わりのない苦痛の中でナナヤの言葉は呪いとなっていった。

そして褪せ人が館に現れ、ミドラーの糸が切れる。ミドラーは劫罰の大剣を引き抜き、狂い火の王になる
道を選んだ。


考察は以上です。かなり長かった……おつかれさまでした。今回は自分の中で描写が少なく、確実性の低いと思った要素についてはなるべく排して考察をしました。確実性の低い要素は、例えばこんな感じ。

・ミドラーは狂い火を有効活用しようと考えていた?
・三本指は奈落の森/ミドラーの館にいたのか?
・ミドラー&ナナヤは角人の中でどういう立ち位置にいたのか?

こうした本編中で情報が足りない要素に関しては、また別の機会に、想像を多く含むという前提の上で考察するかもしれません。というわけで、今回はここまで。改めておつかれさまでした。

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