当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!
↑ゲーム考察チャンネルを始めました。記事をもとにエルデンリングの考察をやっています。
↑動画版なのだ!
オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。
お題は『暴竜ベールとプラキドサクス』について。
暴竜ベールとは
ギザ山の麓にある竜餐の大祭壇。その場所で出会う竜餐の巫女フローサクスは、飢えを知る褪せ人に渇きを満たす方法を教えるという。暴竜ベールの猛る心臓を喰らい、我がものとすること。それは至高の竜餐だと巫女は謳う。
今回はギザ山の頂上を縄張りとする暴竜ベール、そしてベールと因縁深い竜王プラキドサクスについて掘り下げていく。
その暴竜は、名をベールという。
かつて古竜の王に挑み、共に傷つき倒れた、
怒れる破壊者であるという。
フローサクスによれば、ベールは古き時代に竜王プラキドサクスに背いた反逆者であるという。狭間や影の地に見られる飛竜たちはベールの一族の竜である。ベールはかつて王であるプラキドサクスに挑み、大きく傷つけ、遂には敗れた。
ベールがプラキドサクスに謀反した理由は明かされていないが、推測することはできる。
まず古竜と竜は別種の存在だ。竜は古竜から生じ、岩のウロコであるさざれ石を失った。
後述する竜王の追憶で入手できる竜王の岩剣には「永遠なき、卑小な竜の末裔たち」というテキストが見られる。
つまり飛竜は古竜からすれば「卑小」な存在だった。フローサクスは竜餐の戦士の在り方を、若きがゆえの、そして卑小がゆえの、燃え尽きぬ飢えと、猛き心と称している。そして続く言葉は「それは、あのベールにも似て」であり、フローサクスたち古竜からするとベールたちは「若く」、そして「卑小」な存在だと言っている。
古竜と、そこから生まれた飛竜。二つの種族は明確に分かたれ、格差があるということだ。
暴竜ベールの心臓を見てみよう。この心臓はほぼ肉で、さざれ石は少しだけ。一般的な竜の心臓と似ている。
ベールは強大ではあるがあくまで竜。つまり古竜にとっては下等な生物だった。ベールの心臓には二つの心房があり、かつ角のようなさざれ石が生えていた。これは坩堝の諸相ではないだろうか。
実際に後半のベール戦では坩堝の諸相で翼を生じさせるような演出を見られる。ベールは竜の中でも突然変異的に生まれた、坩堝を持つ飛竜であり、そして気性が荒かった。強大な竜として生まれながら、古竜の下と格付けされていたベールは何を思っていたのか。
ややヒロイックな見方にはなるが卑小だとされた竜を率いて、下剋上を起こそうとしたのが飛竜の王ベールであると考えられる。
人間側にもベールの信奉者がいることは老人のボロ家の霊体からわかる。
はよう、はよう、壊しておくれ
すべてを! 思いあがった、尊大と傲慢を!
この老人の霊体はベール側の視点で何者かの尊大と傲慢に怒りを向けている。つまりこの老人の霊体は、竜かあるいは人に対する古竜の態度について怒っているのだろう。
また、赤雷壺によればベールに仕えた古竜も存在する。これはギザ山を登る際に対敵する、古竜セネサクスがその筆頭なのだろう。竜として生まれながら竜王プラキドサクスと互角に近い力を持ったベールは、竜より上位とされた古竜からしても、惹きつけられる存在だった。
しかし当然、古竜側から見たベールはまさに暴君、不倶戴天の敵である。フローサクスはベールに対して「いと憎き我らの仇」と憎悪をむき出しにしており、とどのつまり、ベールとの戦いでプラキドサクスもまた大きな傷を負ったことを示している。
しかし、あくまでその戦いで敗者となったのはベールだ。それは実際のベールのビジュアルを見れば、
一目でわかるようになっている。ベールの左脚はなくなっており、両翼も大きく欠けている。
祈祷「ベールの炎雷」には右腕の、露出した尖骨とある。つまりベールの両翼は引きちぎられているのだ。正に満身創痍となったベールは、老人のボロ家の霊体によると、ギザ山でその体を癒している最中らしい。プラキドサクスとベールの戦いは、おそらく黄金樹以前、先史時代の戦い。その深傷が長い時を経てようやくここまで回復した、とも考えられるか。
ギザ山の山頂近くには幾つかの遺体があり、その心臓には赤い花が生えている。これは竜熱花という花で、幾度となく
竜餐を行った戦士の遺体にしか咲かない。つまりこれらの花を咲かせた遺体は、歴戦の竜餐の戦士でありベールに挑み散ったのだ。
至高の竜餐を目指す者たちは今なお存在し、常に暴竜ベールへと挑みかかる。褪せ人がベールを倒すまでに連綿と、
竜餐の系譜は受け渡されてきたのだろう。
次に竜王プラキドサクスについて。
竜王プラキドサクス
竜王プラキドサクスは本編において、ファルム・アズラに君臨している裏ボス的な存在だ。プラキドサクスについて語る情報は、DLCまではほとんどなかった。数少ない情報源である古き王のタリスマンによれば、プラキドサクスは時の狭間、嵐の中心に座すという。
ファルム・アズラのある場所で褪せ人が横たわると時の狭間へと誘われる。描写から見るにこの場所は時間が歪んでいるのだろう。崩れゆくファルム・アズラがゆっくりと崩壊している理由は、おそらく時の狭間にある影響だ。
古竜岩の鍛石によると、古竜の王プラキドサクスの鱗であるこの鍛石は、僅かに時を歪めているという。時の狭間はプラキドサクスを由来とする空間なのかもしれない。
プラキドサクスは複数の頭を持つ古竜であり、その姿は深く傷ついている。大きな傷が見られるのは欠けた頭部と、
尾の辺り。あとは表面がボロボロになり、中からは金色の肉が見えている。古き王のタリスマンを見るに、本来の
プラキドサクスの頭部は4つだった。しかし今は欠けて二つとなっている。これはベールとの戦いで失ったものだ。
その証拠としてベールの背中の辺りにはプラキドサクスの頭部が嚙みついている。千切れてもなお噛みついて離れないのは、竜王としての意地だろうか。両者の戦いの熾烈な様を物語っている。
竜王の追憶のテキスト曰く。
時の狭間、嵐の中心に座す竜王は、
黄金樹の前史、エルデの王であったという。
だが神は去り、王は帰還を
待ち続けていた。
竜印の大盾のタリスマンの記述通り、先史時代の主は古竜だ。つまりプラキドサクスはかつてのエルデの王であり、王配だった。王配であるからには、神であり女王でもある存在……つまりゴッドフレイにおけるマリカのような存在がいたはずだが、追憶によると「神は去って」いる。
この神と、神が去った理由についての情報はないが、古竜の時代が終わったのは神が去ったことが関係しているのだろう。ファルム・アズラの最奥にはかつてのエルデンリングの紋章が存在している。かつての神はこの律を掲げ、しかしいなくなった。プラキドサクスはこの神の帰還を待ち続けているという。時の狭間に座し続ける理由は、神の帰還を待つためだろう。
しかしファルム・アズラは崩れゆき、プラキドサクスは滅びつつある。フローサクスが敗者であるベールに対して、
いと憎き我らの仇とまで怒りを露わにするのは、プラキドサクスの滅びの発端が、ベールに由来するからかもしれない。
ベールに負わされた深傷がなければ、プラキドサクスは永遠に君臨することができたのだろうか。竜王の岩剣には「永遠なき、卑小な竜の末裔たちに」という一文がある。これは古竜の視点であり、古竜には「永遠」があったという証左だ。
時の狭間に座していたとしても、滅びゆくプラキドサクスは自らの神を永遠には待てなくなった。その永遠を失わせたとすれば、確かにベールは古竜たちの憎悪の対象となるだろう。
そして竜王と古竜たちは暴竜ベールとその一族へ、贄となる定めを与えた。これが竜餐の始まりである。フローサクスが語るように、プラキドサクスとベールの戦いが竜餐の始まりだ。
竜の心臓を喰らい、竜の力を得る。人の身に余る竜という存在を自分のものとする高揚。要するに古竜は人間よりも上位の存在として、人間へ竜となる名誉を与えたということだ。影の地で語られたこの竜餐の起源は、非常に良くできていると感心させられる。
古竜側は憎きベール一族の心臓を喰らうメリットと、そのための力を人間へと与えた。人間は竜を狙い、強大な力を手に入れるという高いモチベーションを得て、信仰は大きくなっていった。ベールとその一族は贄という屈辱を味わわされ、永久に人間から追い立てられることになる。
そして竜餐を行った人間は力に飢え、最終的には至高の竜餐としてベールを狙うことになる。古竜側からすればほとんどメリットしかない。せいぜい、プロモーション係として竜餐の巫女が派遣され、無限に徹夜で働かされているくらいか。
とはいえ、何も古竜は打算だけで人間を利用しているわけではないようだ。若いが故に燃え尽きぬ飢えと、猛き心を持っているベールと竜餐の戦士は似ており。老いた古竜にはないその飢えこそ、ベールを打倒するに相応しいとプラキドサクスは考えたのだろう。竜餐は古竜が人を認めた証でもあるのだ。
さて、ここからは竜餐と関連した幾つかの存在を紹介する。
竜餐の関係者
まずは「竜騎士」について。竜餐の戦士についてはほとんど語られていないが、NPCとしてはエレオノーラが存在する。純紫の血指という二つ名を持つエレオノーラは、竜餐の祈祷を使ってくる。彼女の防具は竜騎士シリーズ一式だ。そのテキストによると、
竜狩り、そして竜餐の誇りとして
竜の一部が用いられている。
彼らは、生来言葉を発することがなく、
ただ竜の力を、その美しさと恐れを求める。
とある。しかしエーゴンをはじめとして竜餐の戦士全員が喋らないわけではないため、あくまで竜餐文化の一部に竜騎士という、生来言葉を発さない、生まれながらの竜餐の騎士が現れるのだろう。
次に「土竜」について。土竜たちは元々は人の英雄だったという。彼らは竜餐をなし、いつか過ちを侵し、
地を這う姿は、そのなれの果てなのだと。土竜たちはかつての竜餐の戦士のなれの果てだ。
何らかの過ちを侵したことで土竜となったようで、それ以外には特に語られていない。土竜が剣を振るうのは、人だった頃の名残なのだろう。ギザ山の麓に繋がる竜の穴にはこの土竜がいるが、土竜がいるのはボス部屋とは逆の方向だ。これは誉れある竜餐の戦士となれなかったという、その末路を示唆した配置と考えられる。
次に「ドラゴン・ハーティド」について。竜餐を続け、只人を超えた者だけが、竜心、ドラゴン・ハーティドと呼ばれる。これ以外にドラゴン・ハーティドへの言及はなく、どういう存在なのかは不明だ。
テキストを読む限りでは人を超え、進化した存在だと捉えられる。次に語る古竜人のことを
指しているのかもしれない。
「古竜人」について。竜の穴のボスであり、敵対者として侵入もしてくる古竜人。古竜人はかつて竜餐の戦士の一人であり、暴竜を食らい得る戦士を選別していた。竜餐の戦士、元人間でありながら竜餐を与える古竜に近しいポジションにいたということだろう。竜の穴の先にはギザ山の麓、竜餐の大祭壇があるため、そこに通す相手を選別していたと考えられる。
褪せ人は岩の心臓というアイテムを使用することで、この古竜人に変身することができる。岩の心臓には竜餐についてかなり重要な情報が書かれている。
竜餐の古い原型とされる心臓。
裸で使用し、人の身を古竜となす。
このテキストから推察するに、これがかつての竜餐の始まり、竜餐のプロトタイプのようなものだったのだろう。竜餐が竜の心臓を喰らって竜の力を得るのに対し、この岩の心臓は喰らった者を「古竜」にしている。心臓を比較するとわかるが、竜の心臓と古竜の心臓は大きく違う。竜の心臓には少ししかさざれ石が見られない。
これは竜が古竜から生じたとき、岩のウロコであるさざれ石を失ったからだ。対する古竜の心臓は岩の心臓であると、
巫女の心臓に記されている。つまりこの古竜人の心臓は、竜餐を始める際に古竜が人の戦士に与えたものということ。古竜たちは命を捨てて、人に力を与えたのだろう。
王都の古竜信仰とはまた別の形ではあるが、人と古竜の信頼の証なのだ。古竜人のかつての想いも岩の心臓から読み取れる。
人の身で、最後に眺めた景色は、
夕焼けの中で、だが全てが色褪せ。
永遠とはほど遠いものだった。
この永遠は竜王の岩剣で語られた、古竜を象徴する「永遠」なのだろう。古竜人はこの心臓を喰らい、古竜と一体となった。それは人の身ではできない、竜餐を遂行し続けるという誓いなのだ。
竜の穴で散った古竜人は結果的には暴竜ベールを倒しうる褪せ人を通しているため、彼が人間だった頃からの願いは、
最終的には達成されたのだろう。
さて、長くなったのでまとめよう。
先史時代のエルデの王プラキドサクス。彼に牙を剥いた暴竜ベールによって、二つの竜が激突し、お互いに深傷を負った。
ベールは敗れてギザ山に身を潜め、その満身創痍の体が癒えるのを待った。一方で勝利者であるプラキドサクスは、しかし時の狭間に座し続けるだけの力を失った。竜王によっての神であり、すでに去った女王を永遠に待ち続けることはできなくなったのだ。
この報復として古竜たちは仇敵ベールと、それに連なる飛竜たちを人間の贄とする事と決めた。飢えを知る戦士たちが竜の心臓を野蛮に喰らい、その小さな身に竜の高揚を宿す。竜餐の始まりである。
そして至高の竜餐とは、飛竜の王である暴竜ベールの心臓を喰らうこと。かつて竜餐の始まりとされた古竜人を超え、その飢えと渇きが満たされるまで猛き戦士たちはベールに挑み続ける。それこそが竜王さえも認めた、若く卑小な者たちの強さなのだ。
というわけで今回はここまで。おつかれさまでした。