オデ、イエティ。オデは毎日自炊している。
オデは毎日、料理研究家リュウジくんのレシピを作っている。毎日だ。盛っているわけでもなんでもなくほぼ毎日作っている。客観的に見てとんでもないヘビーユーザーだと言える。Youtubeには溢れかえるほどに料理のチャンネルがあるが、オデはリュウジくんしか見ない。最大の理由は「好みが合っている」からだが、突飛な調味料が出てこないことも大きな要因の一つだ。
オデは昔MOCO’sキッチンを参考にしていた。もこみちの一挙手一投足を観察して、同量……ほどではないがそれなりのオリーブオイルを回しかけていた。リスペクトだ。それなりに満足した日々を送っていたが、ある日もこみちは「フュメ・ド・ポワソン」を使い始めた。フュメ・ド・ポワソンを知らない人に説明すると、これはフランス流の魚介出汁のことだ。魚のカマや香味野菜から煮出すものであり、人それぞれだとは思うがすぐに用意できるものではない。
オデはその時、もこみちとの間に深い断絶を感じた。もこみち……今日作れる簡単レシピじゃなかったのかい? オデはもこみちという船長と一緒の船に乗っているつもりだったが、幻想だったのか? この事がきっかけでオデはMOCO’sキッチンという船を降りてクックパッドやクラシルで飯を作るようになった。しかし、二年前くらいにリュウジくんを見つけてからはずっとリュウジくんの飯を作っている。今度こそ同じ船に乗っていたいと思える料理人を見つけたのだ。そのときオデは走り出し、出航間際の船に飛びついた。オデも、オデも乗せてくれ!
今回作るのはローストビーフだ。オデはローストビーフが好きだが自分ではあまり作らない。理由としてはよほどうまく作って薄~く包丁で切らないと固くなるからだ。金をかけた挙句に満足いかないものができるくらいなら店で買ったほうが早い。ローストビーフについてはそうして諦めていたところだったが、今回リュウジくんは闇の中でうずくまるオデに手を差し伸べてくれた。一筋の光明が差したわけだ。
オーストラリア産の牛モモブロック肉(396g)だ。かわいいね。
普段は完成した料理くらいしか写真に撮らないのだがせっかくなので調理工程の一部を写真に撮っておく。自炊する人にはわかるかもしれないが当然スマホを触るたびに手を洗う必要がある。スマホは超~汚いからだ。手を何度も洗う余計な手間が掛かるので、写真を撮るためとはいえあまり料理中にスマホを触りたくはない。
塩をすり込んだ牛肉に黒コショウとにんにくのすりおろしをまぶす。リュウジくんのヘビーユーザーはもれなくにんにくを常備している。
牛脂を溶かして温めたフライパンで牛肉の全面を焼き付ける。一般的に家庭で作るローストビーフはだいたい似たような流れで作るはずだ。オデが驚いたのは次の工程。焼き目を付けたローストビーフを皿に移してレンジで火を通すのだという。レンジなんだ。
オデはこれまでローストビーフに火を通すためにレンジを使ったことがなかったのでこれには驚かされた。確かに効率的だ。オデはリュウジくんのヘビーユーザーになる前から料理にレンジを使うことに抵抗はない。美味いものができればそれが正義だからだ。
レンジで火を通した後はアルミホイルに巻きつけ、それをタオルで覆う。いつ我が家から消えてもまったく困らないゴワゴワのタオルを選んだ。これがやつの最後の仕事となるやもしれない。
アルミホイルとタオルでじっくりと熱を通した後、お皿に盛りつけてベビーリーフを散らしたら至高のローストビーフ完成だ! 本来は上からソースを回しかけるのだがわさび醤油との選択式にするためにこの場では掛けなかった。写真を撮って気づくのだがベビーリーフの水気を取るのが甘い。オデは野菜の水気を切るのが面倒で嫌いなのだ。同じことを思っている自炊ユーザーはたくさんいると思う。
至高のローストビーフ……結論から言うとチョーうまかった。オデがこれまで作ったものよりも格段に柔らかく、ソースが肉の味を際立たせていた。これまで自作したローストビーフを食べるときはなんだか硬いのでわさび醤油を掛けて何度も何度も噛みしめていたものだが、こうして柔らかいとなるとソースのほうが好みだった。にんにくが多くてパンチも利いており食べていて飽きない。強いて言うならベビーリーフをもう少し多めに食べたかった。ベビーリーフの戦力がローストビーフに釣り合ってなかったな。
オデはこれまでローストビーフを作るときはこの……なぜかジョジョの億泰がローストビーフを作る謎のSSを参考にして作っていたが、今後はリュウジ式でやろうと思う。全体的な流れは似ているのだがレンチンが入るからか余熱を入れる時間をかなり短縮できる。とはいえ、全体の工程が通じているおかげで慣れがあって作りやすかったのは確かだ。ありがとう、億泰。これまでのローストビーフは無駄じゃなかったよ。