当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!
↑ゲーム考察チャンネルを始めました。記事をもとにエルデンリングの考察をやっています。
↑動画版なのだ。
オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。
お題は『夜の剣士ヨラーン』について。
ヨラーンのイベントをおさらい
マヌス・メテルの大教会にて、大司祭ユミル卿に頼まれ、神秘の遺跡を探索することになった褪せ人。その褪せ人の探索を手助けするため、ユミル卿は夜の剣士ヨラーンに褪せ人を助力させる。
指遺跡へと歩を進める褪せ人のため、最大三度も協力サインで召喚する機会をくれるヨラーン。
しかしヨラーンはあくまでユミル卿のための戦いであると言い、褪せ人と慣れ合う気は無いという。やがてユミル卿に尽くし続け、イベントの最後には悲劇的な死を迎えるヨラーン。彼女は一体、何者なのか。なぜ、ユミル卿へと忠誠を誓っているのか。しっかりと掘り下げていく。
まずはユミル卿とヨラーンのイベント、そしてユミル卿の目的についてざっとおさらいをする。大教会にて褪せ人とユミル卿は出会い、ユミル卿は各地の指遺跡にある吊り鐘を鳴らすことを頼む。依頼を受けた褪せ人は各地の遺跡へ向かい、その道中でヨラーンと協力しながら探索を進めていく。
やがて大教会の地下にて、最後の遺跡を見つけた褪せ人。しかしその指遺跡を、ヨラーンの妹であるアンナが守っていた。唐突に襲われた褪せ人はアンナについてヨラーンに話すが、ヨラーンは困惑した様子を見せる。やがて最後の吊り鐘を鳴らした褪せ人は、指の母メーテールと遭遇し、これを撃破する。
大教会へと戻ってきた褪せ人は、唐突にヨラーンによる襲撃に遭う。褪せ人の命を奪えとの、ユミル卿の命だという。
そのヨラーンを返り討ちにすると、続いてユミル卿が侵入してくる。ユミル卿との戦闘を終えると大教会の柱にはヨラーンがもたれかかっており、ヨラーンに「祝福の瞳膜」か、「暗闇の瞳膜」のどちらかを使用することができる。
祝福を使うと、夜の剣士ヨラーンの遺灰が。暗闇を使うと、夜の刃の武器が入手できる。
さて、ヨラーンを語る上で重要なユミル卿については別記事で詳しく語っているので、ユミル卿について詳しくはそっちを見てほしい。ここではざっくりとユミル卿の目的を説明する。
ユミル卿は指の母メーテールを褪せ人に討伐させ、その成果を褪せ人から奪おうと考えていた。各地の吊り鐘を鳴らすのはメーテールのいる空間に行くために必要だから。ヨラーンを協力させていた理由も、褪せ人が各指遺跡を回ることが必要だったからだ。
夜の剣士とは
ではヨラーン本人はユミル卿やその目的について、どう考えていたのか。まずはヨラーンとその妹のアンナ。二人の「夜の剣士」について掘り下げたい。ヨラーンとアンナの装備、「夜シリーズ」はボニの牢獄にて入手できる。
このボニの牢獄はユミル卿のイベントとは一切関係なく、ヨラーンたちもボニの牢獄などについて言及することはない。
夜防具には、
その表面には、指紋にも似た流線が刻まれ、
纏う者を光無き闇に閉じ込める
地下深くで生まれた者たちは、
これを与えられ、夜の剣士となる。
と記されている。つまりヨラーンとアンナは、牢獄の地下深くで生まれ、夜の剣士となった。
この事は遺灰のテキストにも書かれている。牢獄は角人のものなので、これも角人の文化だ。
二人は、暗く寒い牢獄で生まれ
光を奪われ、夜の剣士として育てられた。
それは彼女たちを、恐るべき刃となし、
また心を弱くした。
光を奪われ、という点に関しては夜防具の「纏う者を光無き闇に閉じ込める」という特性だろう。
光を奪う意味はわからないが、従順にするためだろうか。牢獄で生まれた者を育て、屈強な戦士とする。
それが「夜の剣士」だ。
当然良い文化には聞こえないし、姉妹は苦しい育ちだったのだろう。しかし二人は後に、ユミル卿によって救い出されている。ユミル卿は二人の境遇について、
…あの娘は、かつて不幸でした。
だから、他人に辛くあたることがあるのですが。
…悪い娘ではないのです
ええ。あれも、あれの妹も、とても良い娘なのですよ。
と口にしている。ではユミル卿は一体どういう経緯で二人を見つけたのか。
これは夜防具にある「指紋にも似た流線」というテキストに秘密がありそうだ。
影の地には「流紋」という鍛冶術が伝わっている。特殊な仕様で中距離攻撃ができる流紋武器というシリーズがあり、
そのシリーズには基本的に共通して流紋が刻まれている。
この流紋は鍛冶術のタリスマンによると、溶鋼に刻まれた皺に文字を見出して生まれた技術とされる。つまり流紋は溶鋼に刻まれていた皺をもとに生まれている。この皺というのは二本指など、大いなる意志に仕える者の指紋ではないだろうか。
影の地には指遺跡があり、指の研究者である指追いになった角人の霊体も見られる。古来から指の母メーテールや二本指の痕跡が神聖視され、その指紋がやがて流紋文字として見出されて鍛冶術の文化に落とし込まれた、と考えられる。
夜防具の背中を見ると五指が象られている他、アンナの武器にはハッキリと流紋文字が刻まれている。指紋にも似た流線、というのは流紋のことで間違いない。
指紋が文字へ変わり、形が変わって受け継がれているものの、指の痕跡が夜の剣士という文化に残っていた。ユミル卿は指について研究する指追いの一人だ。指について追う間に牢獄にいた二人の夜の剣士に興味を持ち、救い出したのだと考えられる。
ヨラーン側は、褪せ人をある程度信用した後に、「…あの時、私たちは卿を知り、星空を知った。」と言っている。姉妹揃って、ユミル卿に救われたということだろう。そう聞けばヨラーンの忠義のほどにも得心がいく。
ヨラーンはユミル卿の目的を知っていながら死ぬまで尽くし、彼が指の母になることを願っている。最終的にユミル卿はアンナは傀儡に、ヨラーンは捨て駒にしている。二人は彼の道具でしかなかったのだろう。
だが、ユミル卿が二人を愛していなかったのだとしても、ヨラーンは彼を愛していた。
ヨラーンの葛藤
しかし同時にヨラーンはユミル卿を、盲目的に信じているわけではない。それがアンナについての褪せ人との会話に現れている。ミアの指遺跡でアンナに侵入された後、その事をヨラーンに報告すると。
…貴様。
今、何を言った…?
…。
…いや、いい。もう口を開くな。
私の星は、ただ一つだ。
それは、貴様の言葉ではない…。
という風に途中で褪せ人の言葉を遮る。そしてその後、ヨラーンは褪せ人の報告に感謝をする。この会話はヨラーンの人となりが明らかになる、極めて重要なシーンだ。
まず、アンナが侵入してきたことにヨラーンが驚いているということは、ヨラーンにとってアンナがその場所にいたことが想定外であるということを意味する。そして驚いていた割りにはすぐに褪せ人の言葉を遮っていることから、アンナが傀儡にされたことに対して思い当たる節があったのだろう。
最後は「私の星は、ただ一つ、それは、貴様の言葉ではない」という言葉で会話を終わらせている。これはもうほぼ答えのようなものだ。
ヨラーンの妹であるアンナは行方不明だった。そのアンナがミアの指遺跡におり、褪せ人に襲い掛かった。この出来事についてヨラーンはユミル卿の仕業であると気づいた。褪せ人の言葉を早々に遮っている事から、
元からそうではないかと疑っていたのだろう。
取り乱して感情的に否定してこないことが、薄々は勘づいていたという証左である。しかしユミル卿への忠誠心が強いヨラーンは、妹を傀儡にされているとしてもユミル卿を裏切る気はなかった。ただ、アンナの末路をはっきりと知れたのは褪せ人のおかげだったので、褪せ人には感謝を伝えた。
全てを知りながらユミル卿に仕える選択を取ったヨラーンは、最終的には捨て駒とされる。ヨラーンは侵入時に、
…貴様、何をしでかした?
ユミル卿は、酷くお嘆きだ。…貴様の死を、望んでおられる。
と言っている。ユミル卿は褪せ人を最初から殺すつもりなのでヨラーンをけしかけているのだが、ヨラーンは褪せ人に非があると知らされたことで、刃を向けてくる。つまりユミル卿は自らの野望のため、褪せ人を利用し殺そうとしていることを、ヨラーンに正直には話さなかった。ユミル卿が卑劣であるという描写である。
ユミル卿は最後まで自らの目的のために姉妹を利用したが、腹の内を全て明かすつもりはなかったのだ。それでもヨラーンは、ユミル卿が指の母になることを信じて死んでいったのである。
ヨラーンとユミル卿の対比は、「星」という言葉でも表現されている。ユミル卿は序盤は褪せ人に「輝ける星の導きが、あらんことを」と言っている。しかし目的の達成が近くなってからは、「貴方が、輝ける星にならんことを」と声を掛けている。これは褪せ人が自らの目的を成就するのに必要な最後の駒だからだ。
ユミル卿にとっての星とは、体のいい煽て文句に過ぎない。一方でヨラーンはユミル卿こそ「星」であると
言っている。最期の言葉でもユミル卿へと、「私の星よ」と呼び掛けている。ユミル卿が言う星は、ただの言葉だ。
しかしヨラーンにとっての星は、かつて見た希望の象徴なのである。
二つの瞳膜
ヨラーンの最後のイベントでは、彼女に二つの瞳膜のどちらかを使用することになる。このイベントも考察していこう。
瞳膜について軽く解説しておくと、この二つの瞳膜は黄金樹の司祭が用いた欺瞞のアイテムだ。コンタクトレンズのようなもので、祝福をつけると光が宿る。暗闇を使うと光を奪われる。
黄金樹の見えない影の地で、黄金樹を信仰させるために用いられた。信じる者には祝福で偽の光を見せ、信じない者には暗闇で祝福を奪ったように見せかける。そうしたアイテムである。そしてもう一つ。
ヨラーンの使ういくつかの言葉は非常にポエミーでわかりにくいので、個人的にこうではないか、と言い換えてみた。
あくまで個人的な解釈だが参考程度に。
柱にもたれかかり、死にかけているヨラーンはうわ言のようにつぶやく。
…ユミル卿。
見えません。星が、星空が。
これはユミル卿の名を呼びつつも、ユミル卿を喪ったことを察している台詞だろう。では、まず祝福の瞳膜から。
…ああ、なんて眩しい。
もう、どこにもないのですね。私たちの夜は…。
祝福の瞳膜を使用したことで、ヨラーンの目に光が宿った。しかし人生でユミル卿という星の光を頼りにだけしていたヨラーンにとって、祝福の光は眩しすぎた。この眩しいというのは光量の意味ではなく、祝福によってもたらされる多幸感などが、ヨラーンの人生で与えられなかったものだからではないだろうか。
事実、ヨラーンの遺灰には、だが、それは時に眩しすぎ、夜を消し去ってしまうだろう。とある。ヨラーンにとって夜というのは、自らの生まれの闇でありながらも、必要なものだったのだ。要するに一つのアイデンティティのようなもので、これを失ったことは自我の消滅などを示唆しているのかもしれない。
次に暗闇の瞳膜について。
…ああ、光など、どこにもない。
これが、私の夜です。私たちの…。
暗闇の瞳膜により闇を与えられたことで、ヨラーンは完全に光を失くした。その代わりにヨラーンはアンナと一緒だった、かつての夜に還っていったのかもしれない。遺灰となることはなく、そのまま死んでいった。
二つのイベントの顛末はこんなところである。かつて暗闇の中で生き、ユミル卿によって救い出された夜の剣士。彼女は光のない夜の中で自らの信じるべき輝く星と、それを追う安らぎを手に入れた。
やがてそれを失ったとき、褪せ人によってヨラーンにもたらされる祝福、あるいは暗闇は、彼女にとって新たな救いとなるのだろうか。
さて、今回は夜の剣士ヨラーンについての考察でした。そこまで長くないイベントながら、ユミル卿ともども
語るところが沢山ある、魅力的なNPCだと思います。遺灰を合体させたり分離させながら、一緒に旅をしていきたいですね。
というわけで今回はここまで。
おつかれさまでした。