【エルデンリングDLC】指の母ユミル卿について【考察】

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当記事では『エルデンリングDLC』のネタバレがあります! ご注意ください!

↑ゲーム考察チャンネルを始めました。記事をもとにエルデンリングの考察をやっています。

↑動画版なのだ

オデ、イエティ。
今回は『エルデンリングDLC』の考察をしていきます。

お題は『指の母ユミル卿』について。

目次

ユミル卿イベントのおさらい

大教会の最奥にて、褪せ人が出会うことになる大司祭ユミル卿。彼は邂逅を喜び、褪せ人へとある使命を託してくる。
一体彼は何者で、どういう思惑を持っているのか。

ユミル卿と出会うことができるのは影のアルターにある、マヌス・メテルの大教会。大教会内の周りには人形兵たちが警備をしており、どことなくリエーニエと似た雰囲気を醸し出している。大教会内は非戦闘エリアとなっており、その中では大司祭ユミル卿と彼の忠実なる部下、夜の剣士ヨラーンと交流できる。


ユミル卿は褪せ人へある使命を託す。それはユミル卿の与えた地図を頼りに影の地にある神秘の遺跡を見つけ出し、遺跡にある吊り鐘を吹き鳴らすこと。そうすれば吹いたものは星に導かれるという。

ユミル卿の導きのままに順調に吊り鐘を吹き鳴らしていく褪せ人。その終着点はユミル卿が一時は隠していた、大教会地下のミアの指遺跡だった。ミアの指遺跡で吊り鐘を吹き鳴らすことで、指の母メーテールのいる空間へと招かれる。

そこでメーテールを撃破し、大教会へと戻ってくるとヨラーン、そしてユミル卿が唐突に襲い掛かって来る。戦闘が終わり、ユミル卿が死亡するとユミル卿にまつわるイベントは終了となる。


……これら一連のイベントについて、因果関係がよくわからないというのが、大抵のプレイヤーの感想ではないだろうか。

ユミル卿は指遺跡の吊り鐘を吹かせるために褪せ人を導いていたのに、最後のミアの指遺跡の吊り鐘を吹き、メーテールを倒した後は褪せ人を殺しに掛かってくる。彼は何を考えていたのか。なるべく一つずつ丁寧に掘り下げていく。

ユミル卿とユーリ

ユミル卿を理解するにあたって重要なのが「ユーリ」という、彼のいとし子だ。初対面の際、ユミル卿は「坊やが遊んでいるから足元に気を付けて」と注意する。この坊やがユーリだ。何度目かの訪問時にユミル卿は小さなユビムシを抱いている。このユビムシこそがユーリである。

ユミル卿のイベントを進めるとユミル卿を大教会の外、墓場で見かけることがある。この際に少し離れていると彼の独白を聞くことができる。どうやらイベントが進む間に、ユミル卿のいとし子であるユーリは死亡してしまったようである。ユミル卿が墓参りしているのはユーリのためだ。

生前のユーリに対してユミル卿は「うなされている」と言っていたので、この時にはすでに命の灯が消えかけていたのだろう。ユミル卿はユーリに対して、「しっかりと産んであげられなかった」ことを謝罪している。この意味は後で掘り下げる。重要なのはその後で墓場を訪れた際の独白だ。

…ごめんね。
しっかりと、産んであげられなくて。
けれど、もうすぐですよ。私は、母になります。
そうして、また、貴方を産んであげますから。
…しっかりと、産んであげますからね。

と、イベントが佳境に入るとユミル卿は何か、希望を見出している様子を見せる。そしてその後、褪せ人がメーテールを撃破するとユミル卿が現れて言い放つ。

…私の、輝ける星よ。
母の力を、渡してください。
見てください。私の指たちを。
私は、本当の母になります。
そして、母は一人だけでよいのです!

しかし、褪せ人は「母の力」という物に心当たりがないまま、ユミル卿を撃破することになる。彼は最後にユーリへと母になれなかったことを謝りながら、死んでゆく。

ユミル卿の目的はユーリの母となることだった。そしてそのために褪せ人を利用し、母の力というものを求めていた。
では、母の力とは何なのか。メーテールとはどういった関係があるのか。

母の力

まず当動画での結論はユミル卿が求めていた「母の力」というものはどこにも存在しない、というものだ。順を追って解説する。

まず、前提としてユミル卿の最終目的はユビムシの母になることだ。これはユーリのことだけではなく、ユビムシという種全体の母になることを目指している。大教会の外にはユーリ以外にも大量の墓がある。そして大教会の天井の吊り下げられた檻には、ユビムシの死体が詰まっている。


これらの描写から察せられるのだが、ユミル卿が産んだユビムシはユーリだけではない。ただちょうど、褪せ人がユミル卿と出会った際にユーリと名付けたユビムシを産んでいただけ。あるいは生まれるユビムシには、常にユーリと名付けていたのだろう。

ユビムシたちは儚い存在であり、すぐに死亡するためユミル卿が産んでは死に、を繰り返していたのだろう。戦闘中見ればわかることだがユミル卿は自らユビムシを産みだしている。つまり生物学上の母は、ユミル卿だ。この方法については指紋の秘薬などから考察できる。

人の身で、指にならんとする者たちの秘薬。
それを飲むと、体の中を何かが這い回る。

指紋の秘薬はユビムシの卵であり、ユミル卿は恐らくこれを摂取することでユビムシを産んでいる。しかしユミル卿から産まれたユビムシは、すぐに死んでしまう。

ユミル卿はこれを嘆いており、本物のユビムシの母であればユビムシたちは死なずに済む、と考えている。そんなユミル卿が見つけた希望が、そして同時に憎むべき対象となるのが指の母メーテールである。指の母メーテールはかつて狭間に落ちてきた流星であり、全ての二本指とユビムシの祖先である。

ユミル卿はメーテールがユビムシの祖としての力を持っていると確信しており、それを「母の力」と呼んでいる。褪せ人が指遺跡を巡らされ、最終的にメーテールへと巡り合わされたのはユミル卿の計画だ。褪せ人がメーテールを弑した後に、その褪せ人から母の力を奪う。これでユミル卿の計画は完了する……のだが。

そもそもメーテールを倒した褪せ人だが、特にユビムシを産みだす力を得たわけではない。せいぜいメーテールの追憶を元にした武器が手に入ったくらいである。そもそも指の母メーテールをしても、産んだユビムシはすぐに死んでしまっている。


最初からユビムシという種は儚い存在で、安定した生命力を持っていないのだろう。つまり、ユミル卿はずっと勘違いをしているのである。このイベントの面白いところはそこなのだ。ユミル卿は信用のおけないNPCであり、同時に大きな勘違いをしているNPCでもある。

ユミル卿の来歴

ここからは彼の来歴について、想像を膨らませて考えてみよう。まず、ユミル卿はかつて双月の騎士レラーナお付きの魔術教授だった。ミリアムやセルブスと同じようにカーリア王家に仕える魔術教授であり、おそらくはレラーナと共に影の地に訪れたのだろう。しかしその後は月への忠誠を棄てている。つまりレラーナと袂を分かったということだ。


では、月への信仰を棄てたユミル卿は、何を信仰しているのか。ユミル卿は輝石の魔術師である。輝石の魔術師は星とその生命を探求するもの。そしてユミル卿は大いなる意志の子供たちであるということに誇りを抱いている。しかしユミル卿は大いなる意志についての考えが誰にも理解されないことを嘆いている。


ではなぜ、大いなる意志の考えが伝わらないのか。それは大いなる意志の波動を受信する、メーテールが壊れて棄てられているからだ。ユミル卿は輝石の魔術師として影の地を踏み、指遺跡を見てメーテールの存在と、その状態に気づいた。ユミル卿はミアの指遺跡の上にマヌス・セリスの大教会を建ててその存在を隠した。レラーナから離反したのはこの頃だろう。

そしてやがて、メーテールの眷属であるユビムシと出会った。ユミル卿は大いなる意志の言葉を受け取るべき
メーテールが壊れていること、そして慈愛を向けるユビムシたちが、その祖によって脆弱に産まれているのだと勘違いした。

ユミル卿がメーテールを直接葬ろうと考えなかった理由は定かではないが、ユミル卿はメーテールのいる空間に向かう方法だけ突き止め、影の地に訪れた褪せ人に行わせた。

また、夜の剣士のアンナを傀儡にし、ヨラーンは褪せ人に協力させている。そしてユミル卿は最終的にはメーテールを撃破した褪せ人を、ヨラーンに命令して殺させようとし、最後は自らの手で葬ろうとした。彼の来歴と事の経緯はこんなところだろう。

指の母


ユミル卿が指の母になりたい理由は二つ。一つは慈愛を向けている対象であるユビムシに、産み直しによって真っ当な生を与えてやりたいということ。二つ目はメーテールに代わり、信仰の対象である大いなる意志の波動を受信することだ。

これはユミル卿の武器、母の杖を見ればわかる。ユミル卿は歪んでいるが黄金樹の治世とその狂いを案じており、自らが二本指に代わる存在として、世界を導こうと考えていたのだろう。


また、語っておきたい重要な点としてユミル卿が語るマリカやミケラ、メーテールへの発言は、彼の私情が強く入っているため真偽が疑わしい。ミケラについてユミル卿はこう言っている。

自らの出自が、血が、
如何に汚れ、狂っているのかを。
悲壮なことです。
それが故に、すべてを棄ててしまおうなどと。
ああ、すべては母の罪だというのに。

ユミル卿はミケラの行きつく先について興味があって話しているわけではなく、ミケラの母であるマリカが悪いという
結論
ありきで話している。

次にマリカと二本指、メーテールについて。ユミル卿は現在の世界、その救いの無さをマリカとマリカを導いた二本指が壊れていたせいと語る。その後、真に壊れ、狂っていたのは二本指の母であるメーテールであると訂正している。


ユミル卿はミケラの母マリカと、ユビムシと二本指の母、メーテールを憎んでいる。非常に感情的に批判しており、その理由は嫉妬である。ユミル卿は母になれない自らにコンプレックスを抱いており、母たる存在を憎んでいるのだ。


実はメーテールに関係するテキストではメーテールは壊れ棄てられていただけで、メーテールが壊れているせいで世界がおかしくなった、と主張しているのはユミル卿だけである。ユミル卿は一見すると冷静でずる賢く見えるが、その実思い込みが激しく、恣意的な振る舞いばかりしている。


その事実を表しているのが、魔術「守り指」のテキストだ。

その指は、母を守る子らである。
あるいは、そう願う母の幻想である。

この魔術は自らをユビムシに守ってほしい、というユミル卿の願望が形になったものだ。ユミル卿は自らの子に守ってほしいのである。

さて、長くなってきたので、まとめようと思う。


かつて魔術教授だった男、ユミル卿は大いなる意志の波動を受信するメーテールの存在に気づいた。やがてメーテールを追う中でユビムシに慈愛を向けるようになり、自らユビムシを産みだすに至る。

しかし産まれたユビムシはすぐに死してしまい、ユミル卿はメーテールに原因と救いを見出す。メーテールが持つであろう、母の力を殺して奪うことで自らが指の母に成り代われると信じたのだ。

やがて褪せ人が現れたことで、ユミル卿は褪せ人を利用してメーテールを撃破させる。そして褪せ人が得た母の力を奪おうと、ヨラーンと共に襲い掛かってきて返り討ちになった。


という流れである。再確認するとかなりシュールだが、全員大まじめだ。実のところユミル卿はミケラの行動やマリカの狂いを言い当てており、世界の真実に近い人物である。しかし妄執からどんどん暴走していき、最終的には褪せ人にまで「母は一人だけで良い」と、叫んでいた。


ともあれ、指の母になろうとしたユミル卿の末期の言葉は自らの子であるユーリを想うもの。大いなる意志の波動を受け、世界を導きたいという長大な願望を持っていたユミル卿。しかし今際の際に絞り出した我が子への慈愛こそ、ユミル卿の中心に常にあった感情なのだろう。


というわけで今回は指の母ユミル卿について徹底的に考察した。DLCの中でも非常にお気に入りのキャラクターだ。
彼の部下であるヨラーンについてはまた別の記事でまとめる。

個人的にユミル卿の好きなポイントは、巧みに嘘をつく有能な人物ながら根本的に勘違いをしており、かつ行動基準が感情寄り、という点だ。これは他のNPCにはない、ユミル卿の強烈な個性だと思う。


皆さんも彼のように遠き彼方へと想いを馳せ、ユビムシの子を可愛がってみてはいかがだろうか。では、おつかれさまでした。

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