オデ、イエティ。今日はPS5ソフト『Returnal(リターナル)』の考察をするよ!
ネタバレ注意!
前回はこういう記事を書きまして、リターナルの主人公であるセレーネ・バッサスという妄言ポエム……もとい、非常に魅力あふれた女性である彼女について考察しました。今回はリターナルというゲームの舞台である「惑星アトロポス」について考察します。あくまで個人の考察なので適当です適当。
↑ 無料DLCシシュポスの巨塔についての考察
ゲーム本編の時系列
数千年前 惑星アトロポスから白い影信号が発せられる
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現代のセレーネが息子のヘリオスを乗せて車を運転している最中、進路上に宇宙飛行士が突然出現する。セレーネが慌ててハンドルを切ったことで車は湖へと落下して水没してしまう。ヘリオスは行方不明になり、セレーネは慌てて浮上したために大けがをしながらも生きながらえた。
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セレーネはアストラの探査船を盗んだことをチームに隠し、協力を得て白い影の発信源を探す。その発信源が惑星アトロポスだと気づいたセレーネはアトロポスへと向かう。
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探査船ヘリオスはアトロポス上空で撃墜され、不時着する。
(ゲーム開始時)
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セレーネは修理不可能となったヘリオスから脱出してアトロポスの探索を始めるが、探索の途中で死亡してしまう。しかし何故かセレーネはヘリオスで目覚め、自らがループ現象のただ中にいることを知る。
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ループの原因はセレーネを呼び寄せた白い影の発信源を目指すことで判明するとセレーネは考え、探索を続けて要塞跡のタワーへとたどり着く。そこではセンティエント最後の生き残りであるネメシスがセレーネを待ち受けていた。ネメシスを下したセレーネはついにアストラとの通信に成功する。
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セレーネは地球へと帰還し、パートナーと共にそこで一生を過ごす。
(ステージ3 クリア)
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老衰で死亡したセレーネはアトロポスで目覚め、アトロポスがループの原因ではないということに気づく。再度、ループの原因を見つけ出すためにセレーネは探索を開始する。(ステージ4)
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深淵へとたどり着き、オフィオンを倒したことでカオスが姿を現す。カオスはセレーネが無くしていた、かつてセレーネが起こした交通事故の記憶を見せる。
(通常エンド)
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セレーネは自らが破滅を生んだことに気づき、砕けた太陽のオーナメントを集めて真実を探すことに決める。再度オフィオンを倒して水底に辿り着くと本当の記憶が蘇った。事故の原因となった宇宙飛行士はセレーネ自身だった。
(真エンド)
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ループする
アストラ社とセレーネの関係
公式にセレーネは知的で機知に富んだ優秀な人物とされており、シップログを見る限りだと博士号を取得している。この内容から察するにセレーネはスカウトというよりは学者としてアストラに入社したと見ていいだろう。
シシュポスのスカウトログでもセレーネは「研究」していることが示されている。この研究は私生活と切り離されていることから仕事のことと見て間違いない。
セレーネ「優秀なスカウトにも我々と同じように使用を認めれば」
スカウトと我々を明確に区別しており、セレーネが純粋なスカウトではないと示している。ちなみにこのシップログを見る限りではセレーネは活躍めざましく、ある程度の発言権があるようだ。
セレーネの独断専行
セレーネは「探査船を任された」とチームメンバーに伝えているが昇進については審査中じゃなかったのかと聞かれた際には明らかに誤魔化している。探査船を半ば奪うような形で調査に乗り出したものと思われる。調査を始めた理由は「信号」を探すためだろう。
人員配置インタビューではセレーネはアストラ司令部の許可が下りない限りは信号を調査しないと言っており、理由を「優先順位が変わったから」としている。
最終的にセレーネは「記録にあるとおりこのポストにすべてを捧げた」と言ってしめている。ここで言うポストは本職である研究職のことではないだろうか。
ちなみにこの会話には非常に気にかかる部分が多くある。
→アストラ司令部の許可が下りない限り信号を調査しない
つまりセレーネは元々こうやって釘を刺されなければ信号を調査する可能性がある。ちなみに当然だがアトロポスに来ている時点で信号を調査している。要するにセレーネはこのインタビューで全くのでたらめを言ってごまかしているということになる。
→セレーネの野心は過去の喪失と関係している?
かつてセレーネは今とは違うスタンスを取っており、それは過去の喪失と関係していた。推測するに二つ。
① 今は亡きテイアの後を継いで宇宙飛行士になること
要は母親がなるはずだった宇宙飛行士というポストにセレーネが固執しているのではないか、とアストラが懸念を抱いているという見方。しかしこの見方はやや怪しい。まず第一にセレーネには明確な目的があって「信号を調査」している。これは宇宙飛行士になりたい、というような野心とはまったく異なる。
当然テイアに虐待を受けていたセレーネはテイアの後を継ごうという気はないし、そんな分かりきったことをシシュポスのスカウトログで表す必要性が無い。
② セレーネが失った息子であるヘリオスを取り戻そうとしていること
アストラ司令部はセレーネが経験した喪失を取り戻す方法を知っており、セレーネがその方法を追い求めているのではないかと危ぶんでいる。それが「信号の調査」と関わっているから釘を刺している、という見方。こちらの方が可能性としては高く感じる。つまりセレーネが純粋に研究に熱意を向けているのか、もしくは隠れた真意があるのか? そこにカマをかけるためのインタビューに感じられる。
つまり未知の惑星には地球を超えたテクノロジーが存在し、それを活用することで失ったヘリオスをセレーネが取り戻せる。そうした可能性をアストラ司令部は知っており、セレーネが目指さないかということを危惧しているのではないだろうか。
セレーネはチームでの行動中に「白い影」の信号を受け取り、アトロポスへと向かっている。この時「経路を変えた」「上層部に繋がらない」などの不可解なことが起きており、船の内部にいるセレーネ自身が関与している可能性もある。
4層以降のヘリオスに残されたシップログでは上層部からの通信が入っており、「セレーネがFISCHER-265-I(アトロポス)を去ったことをうれしく思う」という言葉が入っている(時系列的にネメシスを倒し地球へと帰還した際のこと)これが正しく上層部からの通信であるなら上層部はアトロポスについて詳しく知っているのだろう。
そもそもある程度の詳細を知らなければ「接近禁止惑星」に指定されるはずがない。
ちなみに他にも怪しい点として「別のアストラ調査員との予期せぬ接触」というものがある。普通に考えれば接近禁止惑星のアトロポスで他のアストラ調査員と接触するはずがないのでこれはアトロポスで活動している大量のセレーネのことを指しているのだろう。実際、死亡したセレーネを確認した際はゲーム上でもスキャンが行われる。
これらの理由からアストラ上層部は惑星アトロポスについて一定以上の情報を持っており、セレーネの目的がアトロポスにあり、セレーネがアトロポスへと引き寄せられていることも理解していたものと思われる。
地球へと帰還したセレーネ
ネメシス撃破後、セレーネはアストラとの通信に成功して地球へと帰還している。これは別にセレーネの妄想ではない。
海外のPS5ブログ記事には明確にセレーネの帰還について書かれている。
(ここからグーグル翻訳)
セレーネが響き渡る遺跡に到着する直前に、彼女は「脱出失敗」のエンディングを経験します。このムービーでは、セレーネは地球に戻り、多くの記憶に悩まされていることに気づき、通常の生活を取り戻そうとします。
これらの忘れられない記憶の 1 つは、この特定のメロディーと強く結びついているようで、彼女が再びピアノの前に座ったときにちょうど溢れ出てきます。彼女はそれがなぜ重要なのかをまだ正確には覚えていませんが、重要だということだけは覚えています。
彼女は一生このメロディーに取り憑かれることになるだろう。ムービーは、今では年老いた彼女の手で最後にもう一度演奏して終わります。彼女はその音楽の謎を墓場まで持っていきます。
とある。
墓にはセレーネ バッサスと書いてある。
要するにセレーネはアトロポスを脱出して地球へと帰り、パートナーと一緒に老衰するまで過ごした。それなりに幸せな人生ではあったが、常に頭から離れないメロディーをピアノの前に座って演奏している。4層ではそのメロディーが頭から離れず、探索を余儀なくされる。
4層開始後のログではセレーネがループの恐ろしい性質に気づいて絶望している。63年と8日もの間、というのはセレーネが老衰で死ぬまでの期間である。セレーネは死んだらループするが、地球に帰って死ななかったので老衰死してようやくアトロポスへと帰ってきた。
スカウトログ:こんなところ来ないで無視しておけばよかった。大事な人を置き去りにしてきたのに何にも変わってない!
3層クリア後のムービーでは事故現場を見つめるセレーネ、その後ろから肩を抱いて花を差し出す男性が確認されている。大事な人というのはこの人だろう。しかしセレーネは死ぬ度にループを繰り返すため、ループの謎を解かずに地球へ脱出する意味が無いことに気づいた。
センティエントの歴史
始まりにして終わりである者が現れてハイブマインドに二つの教えを与えた。
一つは栄光の幻影、二つ目は文化。ハイブマインドはさらに優れた種族になるためにそれぞれの教えを受け入れ、始まりにして終わりである者に従った。
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一部のハイブマインドは荒地から深淵へと向かい栄光の幻影を受け入れて戻ってきた。しかし幻影を受け入れた者とそうでないハイブマインドの間にはコミュニケーションが成立しなくなっており、両者の間ですれ違いが生まれた。ハイブマインドとの繋がりが断たれたセンティエントは孤立する者と呼ばれるに至る。
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ある時、ハイブマインドが孤立する者を誤って転落させてしまう。これが両者の確執を生み、ハイブマインドと孤立する者の戦争が始まってしまう。
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センティエントは解決の糸口を探して次元転送装置に辿り着き、「白い影信号」を送る。この信号によって全てのセンティエントは肉体と精神に重いダメージを受けた。
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ハイブマインドはアトロポス全域にセキュリティシステムを作り、孤立した者を封じ込めようとネットワークを構築した。
孤立した者はハイブマインドによって要塞から追放され、フリーキは封じられ、その他は扉の奥へ押し込められた。
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とめどなき破壊の嵐が孤立した者とハイブマインドに襲い掛かった。一度目は暴走したオートマトンによって、二度目は始まりであり終わりである者によって。生き延びた者もいたが段々と衰えていった。
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孤立した者とハイブマインドは始まりであり終わりである者に従ったことを後悔し、孤立した者はイクシオンを筆頭に反旗を翻した。この戦闘で勝利を収めることはなかったが始まりであり終わりである者は水底にて眠りについた。
ハイブマインドは孤立する者を排除しようとしただけだが結果としてこの望まざる虐殺の一端を担ってしまった。そしてネットワークの構築も無意味となってしまった。最終的に生き残ったハイブマインドはたった一人、監視者であるネメシスだけとなった。
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孤立した者たちは呼び声の傀儡と化してしまわないために救済の術を求めてシシュポスの巨塔を追い求めた。しかし巨塔を侵食するアルゴスが巨塔を歪め、孤立した者たちから救済の術を奪った。
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ヘリオスが墜落し、セレーネがアトロポスへと不時着する。
(ゲーム開始時)
孤立した者とハイブマインドの確執
センティエント同士の戦争の発端がシシュポスにて明かされている。右側が通常のハイブマインドで左側は変異したセンティエント。つまり後の孤立する者である。
この両者の間にはコミュニケーションが成立しない。同じ言葉が通じない、とセレーネは言っている。
孤立した者が転落しているアーカイブ。背中を押さえれているようにも見えるが、慌てて手を伸ばして助けようとしているようにも見える。
セレーネによればこの事故がハイブマインドと孤立する者の戦争の引き金となった。
このゼノグリフは締め出された孤立する者側が書いた。供物はおそらく「栄光の幻影」で孤立する者たちは良かれと思って「栄光の幻影」をハイブマインドへと持ち帰った。しかしハイブマインドは栄光の幻影を恐れて一度は引き入れたものの最終的には締め出している。そして両者の戦争が始まった。
これまでの経緯から察するに両者の間に深い憎しみはない。ハイブマインドと孤立する者の間でコミュニケーションが取れないことが戦争を生み出したと言える。
栄光の幻影とは?
リターナルで度々見られる触手生物のこと。「栄光の幻影」「数多の腕」「触手」など様々な呼び方がある。この触手生物はアトロポスに存在する生物に寄生している他、孤立する者にも寄生している。孤立する者は深淵の最深部、星の中心にてこの生物を見つけた。
星の中心で見つけたということはつまり、この「栄光の幻影」は惑星アトロポスの本質に近い。惑星アトロポスを動かしているエネルギー、もしくは惑星アトロポスそのものと言える。
「マルフォームド」と呼ばれる悪性種は深淵の最深部から生じる未知のエネルギーと関連しており、正確に言えば「疾病」に侵されているわけではない。このテキストによれば最深部に生じている「未知のエネルギー」こそが「栄光の幻影」である。
惑星の生物と栄光の幻影の関係は「共生関係」に近いものとなっている。
孤立した者は栄光の幻影を受け入れ高度な生物への進化、アセンションを目指した。体を布で包む、あるいは像を布で包む意味は「その影は四方に広がり深く潜む」。
つまり栄光の幻影を全身へと広げたいという欲求のこと。
砂漠のタブローには未知の場所に向かったセンティエントが孤立した者となって帰ってきているというアーカイブがある。この未知の場所は深淵のこと。
セレーネのスカウトログでも星の中心にあるものと深淵での発見が紐づけられている。
孤立した者が栄光の幻影を見つけるのを手助けした存在があり、それが深淵の眠りし者(始まりであり終わりでもある者)である。孤立した者に与えた力は栄光の幻影のこと。しかし孤立した者は後に始まりであり終わりである者に従ったことを後悔している。
ハイブマインドの崩壊
当初のハイブマインドはオートマトンを作り、インフラを整えて文明を進歩させていた。これはアトロポスに存在する原生生物との戦いで生き残るための防衛拠点を作るためである。要塞跡はその一つにして最大の防衛拠点である。
ハイブマインドはこの後、次元転送装置の使用を試みている。この装置はステージ3の塔にてネメシスが守っているものと同じであり、通常エンド後にヘリオス内/シシュポス内に現れるものと同じ。使用することで恐らくタイムスリップを起こすことができる。
このセンティエントはデバイスの操作を「試みて」おり、何らかの目的があるが成功する確証はないものと推察される。そしてこの後、白い影信号が発信された。
装置を使用しようとした理由はタイムスリップして孤立する者を出現させないようにするのが目的かもしれない。
最終的には装置の使用には失敗し、その代わりに信号が発信された。この信号がセンティエントを狂わせたものとセレーネは推測している。
「白い影信号」は現代のセレーネをアトロポスに呼び寄せており、何者かの意図を感じるものである。つまりこの装置の利用が失敗し、信号が発信されることを最初から知っていた存在がハイブマインドを唆した、と考えることができる。この存在は始まりにして終わりである者だと思われる。始まりにして終わりである者に関しては後述する。
このビジュアルアーカイブに描かれているのは通常のセンティエントのみであり、孤立する者はいない。つまりハイブマインド(集合精神)だったことが災いし一つの信号が伝播して狂ったと考えられる。
ハイブマインドのゼノグリフもこの歴史が正しいことを証明している。
孤立した者が現れ、信号による狂気の痛みがハイブマインドを襲った。
当初のハイブマインドは孤立した者を封じ込めるためにアトロポス全域にセキュリティシステムを構築した。しかしそれは失敗し、足止めになった程度で終わった。
ハイブマインドと孤立する者の戦争が始まってからはハイブマインドはオートマトンを改造して戦争兵器に仕上げた。そして要塞にて激しい戦いが繰り広げられた。
要塞跡の入り口には夥しい数の孤立する者の死体がある。
要塞での戦いはハイブマインドが勝利を収めた。孤立する者は追放され、フリーキは地下に封じられ、その他の原生生物は扉の奥へ押し込められている。
事実、要塞跡のステージにはタレットとオートマトン以外のエネミーが存在しない。
しかし要塞での戦いの後に二度の災厄が起きてハイブマインドと孤立した者は壊滅状態に陥った。まずはオートマトンによる破壊。オートマトンは当然ハイブマインドによって生み出されたものだが、なぜかハイブマインドにまで牙を剝いている。
二度目の破壊は始まりであり終わりでもある者によって。その様子もアーカイブに残されている。タワーに君臨する宇宙飛行士のビジュアルからセレーネは「宇宙飛行士による破壊」を読み取っている。つまりこれが始まりであり終わりでもある者。
ハイブマインドは防衛するために文明を活用したが、それが逆にオートマトンの暴走によってハイブマインドと孤立する者の虐殺を招いてしまった。こうしてハイブマインドは崩壊し、生き残りはネメシス一人となっている。
セキュリティの異常
先ほどのオートマトンの暴走をさらに掘り下げる。
なぜハイブマインドによって生み出されたオートマトンがハイブマインドをも襲ったのか? これはセキュリティに異常が発生したからだ。
タレットの説明を見ると「セレーネには攻撃するが敵対生物には攻撃しない」と書かれている。これはゲーム的には正しい(中立のエネミーが存在するとややこしくなるから)が、設定的にはおかしい。
この異常は何によって引き起こされているのか?
ゲームプレイに立ち返って考えたとき、セレーネのスカウトスーツは「機械」である。しかし悪性のアイテムなどによって「故障」する。つまり機械に対して悪性の存在が作用しうるということ。触手生物である「栄光の幻影」は機械にまで作用してその正常な機能を停止させてしまう。これはマルフォームド(悪性)生物による攻撃でスーツが故障するのと同じ原理である。
孤立する者に対してセキュリティが足止め程度にしかならない理由はセキュリティを停止させる力を持つ栄光の幻影を身にまとっているからである。
オートマトンは栄光の幻影の影響を受けて正常に機能しなくなり暴走状態に陥った、と考えると辻褄は合う。
ハイブマインドのゼノグリフで「期せずして我らはこの望まざる虐殺の一端を担ってしまった」と書いているがそれは生み出したオートマトンが暴走したことを指して言っている。ハイブマインドはオートマトンを造り出したがそれは防衛のためであり、暴走して虐殺を始めることは想定していなかった。
ちなみにセンティエントの高度な文明とゲーム内で度々目にする「物理的な鍵」には文明の格差があって違和感があるとアイテム図鑑に書かれているが、これはネットワークセキュリティが機能しないことが判明した故に生み出した原始的な機構だから。
「何らかの壊滅的な[DATABASE MISMATCH]の後に追加されたものだろうか?」の[DATABASE MISMATCH]はセキュリティエラーに置き換えると意味が通るようになる。
ネメシス
三層ボスのネメシスはハイブマインド唯一の生き残りである。ベッドの生命維持装置に繋がれており、ハイブマインドなので触手がない。ゲーム内で目にする唯一の生きたハイブマインドである。
「燃える顔を持つ者が最後の兄弟の精神の残骸」とされており、これはネメシスのこと。戦闘中のネメシスは大きな顔を持つエネミーとなっている。
セレーネはループ開始から僅かな時間で要塞跡の壁の向こうにセンティエントが生きていることを推測していたが、すでにネメシスしか生き残っていなかった。
ネメシスの足元には次元跳躍装置があり、これは数千年前に白い影信号を送ったものと同じ。
始まりであり終わりでもある者
始まりであり終わりでもある者というのはセレーネのこと。もちろんこれはゲーム本編で操作するプレイヤーとしてのセレーネではなく、数多に存在するセレーネの一つである。大昔のビジュアルアーカイブに残っており、これはセンティエント目線である。そしてこのセレーネには頭部が存在しない。
孤立する者のゼノグリフによると孤立する者は始まりであり終わりである者に従っていたが、後悔している。
ちなみに始まりであり終わりである者=深淵に眠りし者である。紛らわしいが、始まりであり終わりである者は水底で眠りについたとされている。
始まりであり終わりである者はハイブマインドに答えを、孤立した者には力を授けている。この内容は明らかにされていないがハイブマインドには文化を、孤立した者には栄光の幻影(触手)を与えたというのが個人的な見解である。
まず前者の理由だがセンティエントは高度な技術を持っていたがインフラを整えているのはビジュアルアーカイブの時代である。この「インフラ」という言葉も現代の言葉に近くいきなり飛び出てくると突飛であり、このインフラという概念を持ち込んだ者がまず存在する可能性が高い。それが始まりであり終わりである者ではないだろうか。
また後にハイブマインドはセキュリティを栄光の幻影によって突破され、ハイブマインドと孤立する者はオートマトンによる攻撃を受けている。これこそが始まりであり終わりである者の最初からの企みであった可能性は高い。さらにこの破壊の後にトドメかのように始まりであり終わりである者が直々に攻撃を仕掛けている。
後者については孤立する者がハイブマインドと切り離されて得たものが栄光の幻影しかないため消去法で選んでも与えられた力=栄光の幻影であると結論づけられる。また、始まりであり終わりである者自身が栄光の幻影を受け入れた存在である。
始まりであり終わりである者は自らの精神を幻影に分け与え、全身へと寄生させている。そしてハイブマインドと孤立する者を一方的に蹂躙するだけの力を得ている。
始まりであり終わりである者の姿は宇宙飛行士だったりアストラのスーツ姿だったりと一定ではない。しかし始まりであり終わりである者は栄光の幻影に全てを受け渡した存在であり、姿が一貫していなくてもおかしくない。そもそも頭部がなくても存在できるからだ。
ちなみにアトロポスの各地では頭部が取れたセンティエントの像が散見されるが、風化や損傷によって全ての頭部が取れたわけではなく、これは一種の信仰である。
アーカイブにも残っているように始まりであり終わりである者の姿として頭部がないものがあるため、首無しの像にすることで始まりであり終わりである者に近づこうとしたという信仰を表している。中には首を捥いだ像があり、狂的な信仰がうかがえる。
ちなみに孤立する者が布で自らや像を覆う理由は栄光の幻影を広げようという考えだが、この考えの源泉は始まりであり終わりである者である。
始まりであり終わりである者はその殻の中の全てが影で満ちている。この姿の模倣として孤立する者は体に布を巻くという行為、体に布が巻かれた存在(始まりであり終わりである者)を信仰している。
始まりであり終わりである者は深淵の水底に眠っている。その名前はオフィオンであり、つまりリターナルのラスボス。オフィオンはかつてのセレーネの成れの果てであり、栄光の幻影に支配された怪物となっている。
公式のコンセプトアートを見ればよくわかるが、オフィオンの第三形態にはセレーネの顔が浮かんでいる。
「バイザーの奥に漆黒の髑髏」「闇の中で私の一部が取り込まれないように必死にもがいてた」など宇宙飛行士がオフィオンであるという裏付けのスカウトログも存在する。
始まりであり終わりである者はオフィオン。かつて目的のために人間であることをやめ、栄光の幻影を受け入れたセレーネの成れの果てである。
ゼノグリフコードの開発者
ゼノグリフコードは作中で比較的まともな情報源。コードを集めれば集めるほどに翻訳精度が上がり、レベル1~3まで上がった時点で翻訳完了となる。これはアストラの解析によるもので最大でも70~80%程度までしか解読はできない。
これはセンティエントが遺したものとされている。
しかし図鑑に書いてあるように高い文化レベルの半面で言語や筆記手段は原始的とされ、センティエントの「創造力や思考能力からは切り離されている」と記されている。
これには幾つかの理由が存在する。
まず一つ目がハイブマインドと孤立する者の両者間でコミュニケーションが成立しなくなったためだ。これまでコミュニケーションが問題なく出来ていた(あるいはする必要のなかった)ために交流する手段を一から生み出す必要がある。
孤立する者のゼノグリフからはハイブマインドへの謝意や後悔が読み取れ、戦争にはなったもののコミュニケーションを取ろうという意思が存在する。孤立する者の視点から歴史を遺す必要性があった。
もう一つの理由としてゼノグリフコードの開発者が始まりであり終わりである者、つまりセレーネだからだ。始まりであり終わりである者は現代をベースとした文明レベルを持つため、必然的に創造するコミュニケーション方法も現代レベルで落ち着く。それをセンティエントの文明と照らし合わせれば「原始的」だと言えるだろう。
さらに興味深いのが一層~三層で見つかるゼノグリフコードと四層~六層で見つかるゼノグリフコードでは「翻訳精度による解明の結果が真逆」という点だ。
一層~三層でのゼノグリフコードは翻訳精度が高ければ高いほどに意味が理解できる。
しかし四層~六層のゼノグリフコードは翻訳精度が高ければ高いほどに意味が通じず、低ければ低いほどに意味が通じる。これには重要な情報が込められている。
理由はそもそも始まりであり終わりである者が自らの言語をベースとして生み出したからだ。スカウトスーツによるスキャンは一般的な「センティエント水準のゼノグリフ」を解析することに特化しており、その設定のままで地球の言語を読み取るのは逆に効率が悪く、意味が通らなくなってしまう。
例えるなら四層~六層の翻訳は「日本語を英語に翻訳」し、次に「その英語を日本語に翻訳して読む」ようなものであり、こちらの方が通りが悪くなるのは当然だと言える。
四層からのゼノグリフは内容がセレーネの主観に近いものであり、センティエントの歴史を語るものではない場合が多い。
始まりであり終わりである者がゼノグリフを創造して広めたという説も成り立つし、センティエントが意思の疎通に困って、始まりであり終わりである者が遺したゼノグリフを解明して利用しているという説の両方が成り立つ。
個人的には後者がより答えに近いと感じる。始まりであり終わりである者がハイブマインドと孤立する者の意思疎通を手助けすることに得を感じない。
セレーネの失敗
これは明確な答えが存在する。失われたものに手を伸ばしたからだ。タブローで同じ構図が存在し、二つのスカウトが同一の存在であることを示している。
失われたものというのは子供のこと。これもゼノグリフに書かれている。
「衝動に突き動かされ失った子供に手を伸ばした」
これは現代の事故で失ったヘリオスのことだ。
セレーネと家族関係の考察でも書いたようにセレーネは事故を起こして息子であるヘリオスを失っている。そして自らも大けがを負ったが生還した。この時の記憶をアトロポスに来てからのセレーネは失っているが徐々に取り戻していき、オフィオンを倒すことでついに取り戻した。
経緯としてはセレーネが運転中に橋の上に突然宇宙飛行士が現れ、慌ててハンドルを切ったために崖下の湖へと落下。ヘリオスは行方不明になった。セレーネはヘリオスを助けようと試みたが手が届かず、息苦しさ故に浮上している。この浮上した(息子を見殺しにした)という真実を受け入れられず、真エンドまでセレーネが思い出すことはない。
セレーネはアストラ社で働きながらもずっとヘリオスのことを後悔しており、それがアトロポスへと惹かれていった原因でもある。探査艇にヘリオスという名前をつけているのもヘリオスが毎ループごとに墜落するのも現代で起こった事故によるもの。
この事故の不可解な点は「宇宙飛行士」の存在にある。真エンドにてセレーネをずっと追っていた宇宙飛行士はセレーネであることが発覚し、そして唐突に事故のシーンとなる。
これは運転しているセレーネが幻覚を見たという話に思えるが、実際はそうではない。この宇宙飛行士はかつてのセレーネががヘリオスを取り戻そうとした結果なのである。
まずセレーネはアトロポスに無数に存在している。それぞれのセレーネには活動目的があり、基本的にはループを抜け出すために探索している。その一人がループの中で「時間を跳躍できる」「星間移動ができる」ということに気づいたことが全ての始まりだ。
時間を跳躍できることはネメシスが守っていた装置の存在で分かるし、センティエントの技術は「星間移動が可能」なほどに発展している。つまり時間軸を移動しながら地球に戻れるということをセレーネは理解したのである。
そしてそれを利用して過去の地球で自らの起こした事故を止めることでヘリオスを救おうと一人のセレーネが考え、そして実行した。その結果、事故を止めるために宇宙飛行士としてセレーネが橋の上に出現した。しかし現代で運転するセレーネは突然現れた宇宙飛行士に驚いてハンドルを切っている。つまり事故そのものが星間移動して現れた宇宙飛行士によって引き起こされたことになってしまった。
ここで因果が逆転してしまう。ヘリオスが死亡した事故が起きないように立ち回った結果、事故が起きるという逆転。つまり事故は全てセレーネのせいで起きた事になる。
真エンド後に拾えるスカウトログには最終的なセレーネの答えが残されている。セレーネが何をしてもヘリオスを救うことは適わずむしろ逆効果だった。セレーネがヘリオスへ贖罪する方法は永遠にアトロポスに残り、ヘリオスと共に過ごし続けることだと気づいた。
カオスの誘い
通常エンドや病院イベント、真エンドに現れるのがこの赤い目と触手を持つ生物、カオスだ。この生物は深淵の最奥に存在し、セレーネがイコル(黒い液体)と接触すると現れる。
名前はコンセプトアートでXaos(カオス)と書かれている。カオスはギリシャ神話において主神ゼウスをはじめとするギリシャ神話体系における原初の神であり、全ての神々や英雄たちの祖にあたる。
ビジュアルからわかるようにモチーフはコズミックホラー、クトゥルフ神話だろう。そしてこの触手からわかるように栄光の幻影の源であると考えられる。この生物が最初からアトロポスに存在したのか、あるいは星々から渡ってきたのかは定かではない。
セレーネが度々口にしている「赤い光」はこのカオスの瞳のことであり、カオスはいつでもセレーネを監視している。そしてこのスカウトログを信じるならセレーネはカオスと取引をしている。
「全て与えると約束したのに奪ってばかり」
センティエントのゼノグリフには始まりであり終わりである者をめがけて数多の触手が伸びる様が記されている。これによって始まりであり終わりでもある者は精神を貪られた。
孤立する者にも言えることだが触手は宿主に寄生してその精神を食らう。セレーネの場合は顕著なのが記憶を失っていることだ。セレーネは重要なことをほぼ全て忘れ去っている。これは触手によって記憶を食われたことに起因している。
シップログでの会話はある種についての考察であり、これによればセレーネは「自己認識にも限界がある」「外からの視点がなければ、凝り固まった創造性の壁は打ち破れない」と話している。これが栄光の幻影のことならば腑に落ちる点が多い。生命体の精神(記憶)を貪るのは栄光の幻影がそうした精神を持たないからだ。
精神を貪られたセレーネは始まりであり終わりでもある者と化し、様々なことを行った。センティエントを分断し、孤立する者に栄光の幻影を与えた。そして最終的には全てを奪っている。創造主であり破壊者だ。この暴虐に対してセレーネは「自分にも非がある」と認めている。
ちなみにこの記事ではカオスが栄光の影(触手生物)の中心であり、セレーネの精神を食らい続けているという考察をしているがカオス=オクトだと考えて、カオスがセレーネを助けている……という考察も出来なくはない。オフィオンを倒した後でカオスがセレーネに記憶を見せるのはセレーネを助けるため、と解釈することもできる。
実家イベントでのヘリオスは「オクト、ママを助けてあげて」と言っている。カオス=オクトだとすればカオスがセレーネを助けようとしていることに違和感はない。
ただしカオスと栄光の影のつながりは明らかで、スカウトログでは「赤い光(カオス)は全て与えると約束したのに奪ってばかり」と言っているため、一見するとセレーネを助けるかのように見えて実際はセレーネの記憶を断片的に渡し、また精神を食らおうとしている……つまりカオスは裏切り続けていると考えることもできる。
実家イベントの一部ではセレーネが拾い上げたオクトの触手に絡みつかれかけ、慌てて手放すというシーンがある。あれはセレーネ自身がカオス=オクトを信用していないという描写かもしれない。
ループの構築
アトロポスは「セレーネの居場所」だ。息子を救えずに失敗したセレーネが罰を受け続けるための場所であり、そして地球のことを覚え続けるための場所でもある。
セレーネはアトロポスに存在し続けるためにループする方法を考えた。
「選択と結果が逆転する」というセレーネのスカウトログは大きなヒントとなっている。過去に戻って未来を変えようとした結果、事故が発生した。セレーネはこの考えを元に過去に細工をしている。
セレーネはセンティエントを扇動して白い影信号を送らせた。これによって数千年後のセレーネをアトロポスへと呼び寄せるためだ。現代のセレーネがアトロポスへ墜落して探索し始めたことが未来の事故へ繋がり、過去の信号に繋がり、現代のセレーネへと繋がる。選択と結果が逆転し続けている。
実家パート⑤で明かされることだがヘリオスを墜落させているのはセレーネ自身だ。近くにある砲台の砲身が熱で赤くなっていることからも明らかだ。つまりセレーネは墜落してくるヘリオスを打ち落とし続けることでループを確立させている。どの時間軸にもセレーネが存在し、ヘリオスを打ち落としている。これは時間跳躍の装置があることから可能であることがわかる。
そしてアトロポスは非常に特殊な形態の惑星だ。アトロポスの中心には大量のイコルという液体が存在し、これは膨大な力を秘めている。このイコルが生命を生み出し、惑星そのものを変化させ続けている。一回のループごとに惑星の形が変わるのはイコルによるものだ。このスカウトログは一回目のログだが「液体のようにその姿を変える」は的を射た表現である。
エネルギーバリケードの説明も興味深いことが書かれている。
「このデバイスが存在するということはこの惑星には恒久的な防衛施設がないのかもしれない」「交戦地の予測が難しいため動きの速い移動式構造物が大量に必要とされたのではないか」
これはイコルによって姿を変えるアトロポスの環境に適応しようというアイテムと見られる。
イコルは明らかにセレーネと連動している。理由はセレーネの意識が切り替わる度に環境が変化していることだ。そしてセレーネのイメージがそのままフィールドになっている部分も見受けられる。
「心の中の氷河が解け崩れて理知の砂漠が広がる」
セレーネは氷河と砂漠が同じ座標に存在することに混乱していたが、これはセレーネが創造した環境だからだ。
ちなみにどの座標なら変化してどの座標なら固定なのか、細かい線引きはわからない。
変化し続ける惑星でセンティエントが要塞を作った理由は恐らくタワーそのものが固定されているからだ。要塞は深淵の上に建てられており、信号を送った地点(深淵)は大きく変化しないと踏んでその上にタワーが建てられているのかもしれない。
だからセレーネは深淵と同座標に位置するタワーから信号が発せられたと考えていた。
ちなみに一層⇔四層、二層⇔五層、三層⇔六層が共通の座標となっている。ネメシスを撃破した後にタイムスリップして過去に来ている。これは四層以降の生物が一層や二層の生物の「祖先」と図鑑に書かれていることからも確定している。
ループはセレーネを主軸にして行われる。セレーネはカオスに選ばれた者であり、センティエントよりも複雑な精神性を有している。セレーネの意識が切り替わり、ループが開始した時点でアトロポスの環境に変化が起こる。それを繰り返す。
ギリシャ神話において女神セレーネは月経と月との関連から動植物の性生活・繁殖に影響力を持つとされた。これもアトロポスの変化と関連付けられる。
不可逆的な汚染
センティエントのテクノロジーとアストラのスーツに互換性があるのは何も不思議なことではない。セレーネがセンティエントの文明に影響を与えているからだ。そしてパラサイトについても同じことが言える。
パラサイト(寄生生物)はそのまんま栄光の幻影と同じ存在だろう。スーツに与える能力上昇と故障、そして何よりもセレーネ自身が望んでいる。
死亡したセレーネには触手が群がり、精神を貪る。アトロポスとセレーネの奇妙な共生関係だ。
セレーネの死体がたまに蘇る理由は中に栄光の幻影が詰まっているからだ。これはパラサイトとして生前のセレーネを助けていた可能性もあるし、記憶を貪るために死体に入っていた可能性もある。あるいはセレーネ自身が最初から肉体に受け入れていた可能性もある。
セレーネはこの惑星アトロポスで最も可能性を秘めた存在だ。センティエントのテクノロジーとパラサイトへの適正を持ち、不可逆的に永遠に成長し続ける。あらゆるセンティエントや惑星生物の上位的存在と呼ぶこともできるだろう。
アストラの規定では当然この「不可逆的な汚染」に対して否定的だが、セレーネは自らを強化し続けることに魅力を感じており、スカウト規定をくだらないと吐き捨ててさえいる。周回ごとにほぼ別人のようなものだがセレーネは自らに栄光の幻影を取り込むことで上位種になれるということを感づいており、パラサイトなどに惹かれるのはこれが理由だ。
ループに終わりはあるのか?
真エンドを見た後にヘリオスの近くで見つかるスカウトログにればセレーネがアトロポスにヘリオスと共に残る、というのは記憶を全て取り戻した後のセレーネの結論である。しかし究極的に言えばセレーネは常に生まれては死んでいく存在なのでその結論からやがて脱する可能性はある。
「暗闇を閉じ込める唯一の術は底に眠りし者を破壊すること」とあり、オフィオンを倒すことで何らかの変化が起きる可能性が示唆されている。
また記憶を蝕まれたセレーネがゼノグリフを遺していることや度々現れる実家がヘリオスによって見せられていることなど、カオスの関与していないかのような出来事も起きている。
セレーネの実家は真エンドを終えると遺跡のような、ただの背景になる。これはセレーネ自身が自らの記憶と向き合えたことで家が「不必要」になったからだと考えられる。セレーネの家の鍵(アイテム)には「慰めの幽閉」というテキストがあり、この家の出現はセレーネの心を救うための手段の一つと見ていい。
病院のポスターの一枚にこの禁煙ポスターがある。
「QUIT TODAY! WHY KEEP RETURNINGTO SOMETHING THAT IS HURTING YOU?」
と書かれている。直訳すると「今日はやめよう! なぜあなたを傷つけるものに戻り続けてしまうのか?」みたいな意味だと思われる。ポスターの主旨は禁煙を呼びかけるものだが、このポスターの写真は事故を起こす前のセレーネ(あるいはテイア)の車を撮影したものだ。
つまりセレーネは心の中には二つの相反する思いがある。自らを罰するためのアトロポスに留まり続けようという気持ちと、そこから抜け出したいという気持ちだ。セレーネの現状はアトロポスを繰り返すことを望んでいるが、セレーネの家の出現によって記憶を取り戻したり、心のどこかでは自らを赦したいという願いもまた存在する。
残念ながら現状ではゲームの中でループを終える方法は存在せず、そうした結果から考えれば「ループを抜け出す方法はない」というのが結論だ。もしくはメタ的に考えれば我々プレイヤーがリターナルというゲームをプレイしないことこそがセレーネのループの終わりかもしれない。
実家イベントでPS5のゲーム画面としてセレーネが映っているシーンがあるのでそうしたメタ視点で考えることもそう突飛な話ではない。
非常に考察の難しい世界観とセレーネ
ここからは後書きめいたものになるよ! 今回考察するにあたって様々なブログやredditなどを参考にしてみました。redditは多くの謎に触れており、「アトロポスは精神世界派」と「アトロポスは実在するよ派」で論争が起きている印象が強かった。
個人的には「アトロポスは実在するよ派」であり、そもそも「アトロポスは実在する」という考察地点に辿り着くまでの障害が多すぎるのでこの実在派と精神世界派が議論を交わしていること自体がかなり嬉しかった!
リターナルのストーリーはかなり複雑かつ不親切なので「アトロポスは精神世界の出来事」とする方が簡単です。しかし逆に言うと精神世界なら何でもありになるので、センティエントってなんだよとか実家パートってなんだよとか、全部精神世界での出来事だから無意味! 何かの隠喩! で終わってしまう。
リターナルは「惑星アトロポス」という場所に明らかに精神世界という以上の意味を持たせており、ちゃんと背景を感じる解像度になっています。精神世界で終わらせるとほとんどの事柄に意味がなくなり、スケールの小さい話になってしまう。
この手の「主人公が精神世界で罪と向き合う物語」の代表的な例はサイレントヒルだけど、それをさらにSFで解釈して「精神世界だと思っていたものが実在する」というのがリターナルだと個人的には思っている。
もちろん精神世界派にも実在派にもどちらにも考察の穴ができるためどちらが正しいとひとえに判断するのは難しい。あえてその辺りを断定できないようにストーリーが作られているのではないだろうか。この記事でも「絶対にこっちだ!」と断言するつもりはないです。
個人的にこのゲームのストーリーを最も難解にしていると思うのは主人公のセレーネですね。信用ならない語り部であるからというだけではなく、セレーネが連続した存在でないというのが話をややこしくしている。セレーネはアトロポスにほぼ無限に存在し、それぞれが別の選択を取っている。時間軸もバラバラ、考えもバラバラ、精神状態もバラバラ。そんな主人公が残した痕跡をよすがにストーリーを考察しないといけないので穴が出てくるのは当然。
とはいえもちろんセレーネの複雑性がこのゲームのストーリーを面白くしているのは確かでそこは認めざるを得ない! 声優の小山茉美さん(アラレちゃんの声優さんだそうです!)の怪演もセレーネの存在感を強くしている。最初はなんで主人公がオバサンなんだよ……とガッカリしたもんだけど、今では大事なオバサンです。
さてダラダラと書いても仕方ないのでこの辺りで。
最後にお気に入りのスカウトログを貼ってサヨナラ。
これはシシュポスポジティブセレーネ。ループの痛みから現実逃避するためにシシュポスをゲームと捉え、ポジティブに立ち向かおうとしている。このスカウトログを見たセレーネの「この人……これをゲームにしている」というドン引きしてる台詞も味がある。そしてシシュポスは確かにハイスコアを目指すルールなのでメタ的には的を射ていたりもする。面白ログでした。
リターナル、楽しいよ。セレーネおばさんになってアトロポスを駆け回ろうね。